土砂崩れが発生した有間ダム下の道路

土砂崩れが発生した有間ダム下の道路

水の勢いでアスファルトが破損した阿須運動公園の駐車場

水の勢いでアスファルトが破損した阿須運動公園の駐車場

 東日本各地に甚大な水害を与えた大型で非常に強い台風19号は、飯能市、日高市の市民にも、これまでに経験のないほどの水の恐怖をもたらした。11日夜から12日夜にかけて降り続いた未曾有の大雨により、入間川、高麗川をはじめ両市を流れる河川はいずれも水位が急上昇、各所で道路や住宅付近にまで水が溢れ出した。人的な被害は無かったが、各所で浸水や冠水、橋の破損、土砂崩れ、停電、断水などの被害が多数発生。県内全域に大雨特別警報の出された12日夕方には、土砂災害警戒区域の世帯(飯能市5066世帯1万725人、日高市219世帯598人)を対象に両市で初となる避難指示が発令され、飯能市には23か所、日高市には8か所の避難所が開設され、同区域の住民など飯能で2233人、日高で608人(いずれも最多時)が避難した。通過から一夜明けた13日には被害のあった場所の確認や対処が始まったが、全容はいまだに把握しきれず、復旧に相当の時間を要すると見られる現場も。また、地盤の緩んだ地域では今後も土砂災害への警戒が必要だ。

 雨量計に記録された降り始めからの総雨量を見ると、飯能市の上名栗で644ミリ、南川で520ミリ、中藤上郷で494ミリ、双柳(飯能県土整備事務所)で381ミリ、日高市の南平沢(日高市役所)で332ミリ。上名栗では1時間に50ミリを超える特に激しい雨に見舞われた。また、最大瞬間風速は飯能日高消防署によると16・4メートル(13日)だった。

 大雨に伴い12日午後には東吾野地区などで高麗川の水が溢れ久保交差点から上流にかけ国道299号が13日朝まで通行止めとなったほか、入間川も各所で水が溢れ、有間ダムの貯水量が満水位を超え、夜8時半頃から洪水用の放流設備からの放流(越流)が行われた。

 市の情報や取材でこれまでに明らかになった主な被害は、飯能の下名栗の有間ダム周辺で管理事務所付近など数か所、小沢トンネル付近、唐竹の住宅の裏山などで土砂崩れ、清川橋の損壊、落合の民家近くで護岸崩落などが発生。日高では高麗川に架かる新井橋、新堀橋、久保ノ下橋の3つの木橋(もっきょう)が崩壊し流された。

 また、住宅への浸水被害も多数出ていると見られ、12日夜には飯能・日高の一部で2時間ほどの停電が発生した。

 入間川最下流となる阿須運動公園では、駐車場のアスファルトなどが大幅に破損。このほかにも、河川沿いのキャンプ場や観光施設など広い範囲で被害が出ていると見られる。

 台風が通過した12日の状況を振り返ると、午前8時半に日高市、9時に飯能市が相次いで土砂災害警戒区域の高齢者などに早めの避難を促す警戒レベル3の「避難準備情報」を発令、同時に市内各公民館(行政センター)などに避難所を開設した。引き続き、11時半に飯能市、12時半に日高市が同区域の住民に避難を促す警戒レベル4の「避難勧告」、その後、県全域に警戒レベル5の大雨特別警報が発令されたことを受け、午後4時過ぎには対象区域の住民に速やかに避難を指示する「避難指示」を発表。警戒レベルが上がるたびに防災行政無線からの放送が鳴り響いた。

 各所に開設された避難所には、対象となった地域の人々が非常用の荷物を手に次々に避難し、自宅周辺の無事を願いながら不安な夜を過ごした。12日午後11時過ぎには台風が過ぎ、13日朝までには大半の人々が帰宅。日高は13日午前9時、飯能は14日午後2時に避難指示が解除された。

 小中学生の子どもを含む一家4人で避難し、日高市のひだかアリーナで一夜を過ごした栗坪の40代夫婦は「避難は初めて。家のことが心配だったが、近所の人たちも一緒だったので心強かった」などと話した。

 一夜明けた13日、原市場や名栗地区など県道沿いに土砂が流出した場所では、周辺住民が協力してスコップなどを手に土砂や流木の片付けにあたる姿が見られた。自宅近くを沢が流れる下名栗の60代男性は、「沢の上流から木の根が転がって流れを塞ぎ、周りに水が溢れていた。長年暮らしているが、こんなひどい状況は経験がない」。

 飯能河原付近では、上流から流されてきた大量の流木がウッドデッキとマンションの間の空き地に溜まったほか、中央地区行政センター下の石垣が崩れた。

 阿須運動公園では駐車場のアスファルトが割れ地面が隆起。運動公園を訪れた双柳の男性(73)は「毎朝のように散歩に訪れているが、こんな風になってしまうとは。自宅は川から離れている場所なのであまり心配はなかったが、浸水などの被害に遭った人は大勢いるのでは」と気遣った。

 鉄道は、JR八高線は12日午前11時頃から八王子~高麗川間の運転を見合わせ13日午後1時から再開、川越線の川越~高麗川間は12日正午から13日午後2時40分まで運転を見合わせた。西武鉄道は12日午後1時から順次運休し、池袋線は13日午前5時前、秩父線は午後2時44分から運転を再開した。