飯能型住宅の実現を 木の文化守り「地産地生」

森と木の文化継承を願い活動を続けている吉野さん

 木の育成から住宅施工まで産業化する飯能型住宅実現のチャンス───と、語るのは、飯能市飯能の建築家吉野勳さん(67)。

 吉野さんは、昭和24年同所に生まれ、川越高校、法政大学建築科を卒業し、昭和57年地元で事務所を開設。これまで、木の文化継承運動や、町づくりなどに取り組んできた。地元で独立したのは、町づくりには建築家が必要と思ったからという。

 学生時代に学び、東京の設計事務所で取り組んだ仕事は、コンクリートの建物だったが、地元の人との出会いが、木の家づくりに導いてくれたと振り返る。

 設計事務所「創夢舎」を営みながら、地域材を使い伝統の木組みの木の家づくりを「素木の会」の活動でし、林業の活性化などを目指した「NPO法人西川木楽会」でも、森づくりと木の活用に取り組んでいる。

 今、吉野さんが、注目し期待しているのは、今年3月末、国土交通省が発表した「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」。

 国のガイドラインを参考に、市などの所管行政庁が、個別に気候風土に適応した住宅の基準を定めることができ、この基準に適合すれば、魔法瓶のような断熱・機密性を求めた現行の省エネ法の適用除外となる。

 「省エネ法で、厚い断熱材で家全体を覆った構造になり、窓が小さく規格が統一された家ばかりが目立つようになりました。来年4月、同法が義務化されると、無垢の木を活かした縁側のあるような和風の家が建ちにくくなります」。

 しかし、ガイドラインが出たことで、気候風土に合わせて窓を大きくして風通しをよくしたり、続き間、縁側、無垢材の使用、金物類の不使用、手刻みによる加工、土壁など、これまでの伝統的構法住宅の多くの要素が認められる可能性がある。

 地域の木材、技術の伝承、地域の大工、地域に根差す建物形態などもガイドラインに列挙されている。

 「飯能で独自の飯能型住宅基準を作り、地域の西川材を加工し、技術を継承している地元の大工さんなどが施工すれば、一戸の家が、材料から完工までメードイン飯能で仕上がる産業が成り立ちます」と、ガイドラインの可能性を熱く語る。

 「私は、『地産地生』が、今後大事になると考えています。地域に産まれて地域に生きる。地域で産まれたもので衣食住を賄い、地域で生きる、ということです」と、持論を披瀝した。

 魔法瓶型の省エネ住宅には、新建材が多用されている。新建材は、エネルギーを大量に使用して、木のチップを石油などから作られた接着剤で加圧し固めているなど、この新建材には、有害な人工化学物質が含まれるものもある。現代住宅の密閉空間では危険なため、シックハウス法で壁に穴を開け、24時間換気扇を稼働することが義務づけられている。そのため、機密性は十分なものはなく、トータルで考えれば、省エネとも言えない、と指摘する。

 一方、木はCO2を吸収し、無垢の木でできた家は、冬は水分を吐き出し、夏は湿気を吸う。また、家を解体したとき、新建材はゴミになるが、無垢の木は、かんなを掛けることもでき、そのまま再利用も可能。

 「木を大事に使い切ることを考えれば、省エネ・温暖化対策にも成ります。ガイドラインの可能性にわくわくしています。共感する仲間を募って市に飯能独自の基準作りを呼び掛けていきたい」と、吉野さんは目を輝かせている。