阿須「山中」の有効活用 市が民間に貸し出し

 飯能市は、市と同市土地開発公社が駿河台大学西方の阿須地内に共有している約17ヘクタールの山林「山中(やまなか)」について、賑わいづくりなど市の地方創生に寄与する土地活用方法を提案した事業者に貸し出す。同公募に対しての事業者の参加表明は、10月13日から今月6日までの間で受け付けが行われた。今後、来年1月下旬までの事業提案書などの受け付け後、審査を経て、2月下旬には阿須山中で事業展開する事業者が決定する。

 飯能市で初めての取り組みとなる今回の阿須山中土地有効活用事業者公募事業は、土地の賃貸借を結ぶことで新たな財源として確保し、財政負担の軽減を図り、市の地方創生の取り組みを推進するのが狙い。

 対象の土地は、阿須自治会館前の市道(幅員4メートル)を西方に進んだ左手の市街化調整区域の山林。約17ヘクタールある面積のうち、市が7・5ヘクタール、開発公社が9・4ヘクタールをそれぞれ所有している。

同公募事業では、土地は市所有分と土地開発公社所有分を一体として貸し出す。認可区域外であることから、上下水道は敷設されておらず、市の管渠整備の予定もないことから、提案内容によっては上水は井戸、下水処理については浄化槽を計画するなどの検討が事業者側に必要となる。

 提案は、土地17ヘクタールのすべてを利用することが条件で、▽移住、定住の促進に寄与する事業▽観光の振興、農林水産業などに資する事業、その他飯能市が地域再生を図るために取り組むことが必要な政策課題の解決に資する事業が、具体的な事業として例示されている。

 賃貸借期間は実施する事業によって異なり、植樹を目的にした事業が50年間、建物の所有を目的にした場合が30年、それ以外が10年間。事業者はこの賃貸期間が満了した時は、賃貸前の状態に回復して返還しなければならない。

 事業提案の審査については、阿須山中土地有効活用事業者選定委員会が行い、選定結果に基づいて大久保勝市長が最優秀と次点優秀提案者を最終的に決定する。公募の目的に合致しているか、地方創生に資する取り組み(定住・交流人口増、経済波及、雇用創出、賑わいづくり)か、といったことのほか、提案事業と同種、同様事業の実績、ノウハウがあり、実績等に裏付けされた事業展開が期待できる提案かなどが審査される。

 当該土地の最低賃借料は、月額7万2660円。これを上回る提案かどうかも審査対象になる。

 阿須山中の民間への賃貸については、今年9月に市が制度化した「市有資産に関する民間事業者提案制度」に基づいたもの。

 同制度は、市所有の未利用の土地や建物について、民間から活用方法の提案を幅広く募る仕組みとして導入した。民間のノウハウやアイデアで市有資産の有効活用を図り、課題となっている市の財政負担なども軽減する。

 山中土地活用公募にまちづくり上の効果を期待する市だが、事業者の土地利用計画提案の実現については、周辺住民の理解、協力が不可欠となる。