産学連携の取り組み評価 上田知事がとことん訪問

加藤社長(左)の案内で牧場を視察する上田知事

 埼玉県の上田清司知事が8日、「とことん訪問」として日高市旭ヶ丘の加藤牧場(加藤忠司社長)を訪ね、埼玉女子短期大学(女影)の学生と連携して開発した商品の試食や製造現場の視察を行うとともに、牧場関係者や商品開発に携わった学生たちと意見交換を行った。知事のとことん訪問は、県民と膝を交えての意見交換を目指し、県内各地をくまなく訪問するもの。加藤牧場では、「学生の創造力」と「企業の魅力」で地域振興に取り組む産学連携をテーマに視察を行った。

 加藤牧場は、昭和29 年に所沢市で事業を開始し、昭和44年に日高市に移転。牛が自由に歩きまわれるフリーストールと呼ばれる牛舎で約200頭を飼育し、乳牛の質を競う県の共進会でも農林水産大臣賞をはじめ高い評価を得ている。

 搾りたての味にこだわった「ノンホモ低温殺菌牛乳」は、脂肪を砕き均質化する作業「ホモジナイズ」をせず、65度以下の低温で30分かけて殺菌するため、栄養分の変性が少なく、コクと甘みがある。

 搾りたての牛乳を使った商品は牧場前の店舗「バッフィ」で販売。ジェラート、チーズ、ヨーグルト、プリンなどの定番商品をはじめ、「とろ~りチーズ丼」などの個性的な商品も手掛けており、軽食コーナーや屋外のテーブルで飲食を楽しむことができる。

 埼玉女子短期大学は、平成元年に開学。平成16年に「キャリア短大宣言」を行い、多彩なコース制により在学中に実務的な経験を身に付け、学生が憧れの業界を一足早く体験できるインターンシップの充実など企業や仕事を身近に感じながら学ぶことで、就職率99%以上を実現。

 同大学国際コミュニケーション学科の三ツ木丈浩教授のゼミでは、和菓子店などとの商品共同開発や国登録有形文化財「高麗郷古民家」を活用したイベント「古民家カフェ」の実施、巾着田曼珠沙華まつりのバスガイドボランティアなど日高市の地域活性化を目指し、実践的な取り組みを続けている。

 今回の知事訪問では、三ツ木ゼミの連携先の中から、地域の観光振興に熱心に取り組み、期間限定ジェラートやミルク甘酒など、若者の視点を取り入れた新商品を作り出している加藤牧場が訪問先に選ばれ、上田知事は県関係者とともに午後1時頃に加藤牧場に到着。

 現地では市を代表して谷ケ﨑照雄市長、大川戸岩夫市議会議長、加藤牧場の加藤社長、販売部リーダーの加藤恵美子さん、乳製品部リーダーで取締役の加藤満さん、埼玉女子短大の三ツ木教授と学生を代表して2年生の木村美希さん、新田文香さんなどが出迎えた。

 上田知事は加藤社長や三ツ木教授、学生から概要説明を受けた後、牧場や製造現場、販売店を視察。三ツ木ゼミと加藤牧場が連携して商品化した「ミルクマロン蒸しパン」「ミルクティーパンナコッタ」の試食やバターの手作り体験も行った。

 意見交換では、学生たちが社会人としての基礎を身につけると同時に、地域活性化を図り日高市を元気にするために商品企画、情報発信、イベント参加などに取り組んでいる様子や、巾着田のマンジュシャゲシーズン以外の集客を図るため、川越と秩父を結ぶ「ゴールデンルート」を生かし、観光客を呼び込むような工夫をしたいといった話題に。

 熱心に耳を傾けた上田知事は「加藤牧場のジェラートは人気が定着している。都内などのイベントにも出て日高をPRしてもらえたら良いのでは。新しい商品づくりには発想や工夫が大事、そして中身が良いものがヒットしていくと思う。学生さんと事業所の連携による大変素晴らしい取り組みを聞かせて頂いた」などと話した。

 加藤牧場の加藤恵美子さんは「チーズなどの製品作りに関心を持って頂き、励みになる。これからもより良い商品を作っていけるよう努力したい」。学生の木村さん、新田さんは「先輩たちの代から地元の企業の皆さんと一緒に積み上げてきた活動に目を向けて頂き嬉しい。これからも日高を盛り上げていけるよう頑張りたい」と笑顔を見せた。