「平成の発掘調査」展 貴重な出土品など展示

遺跡の発掘調査の様子や出土品が展示されている企画展

 日高市梅原の高麗郷民俗資料館で企画展「平成の発掘調査」展が9月4日まで行われている。昨年11月の市制施行30周年に合わせて企画され、平成3年の市制施行以降の大規模開発に伴う遺跡の発掘調査で出土した土器など資料の一部を展示。

 昨年度から実施し当初は5月の連休までを期間としていたが、展示内容を一部変更し、期間を延長して展示している。

 市文化財担当によると、市制施行以降、区画整理事業、埼玉女子短期大学の開校、ゴルフ場開発、企業誘致など大規模開発が相次ぎ、それに伴い発掘調査を実施。大規模な発掘調査は市の歴史解明に大きな成果をもたらし、縄文時代や高麗郡建郡の理解を深める多くの資料を得ることができたという。

 企画展では、明婦遺跡(鹿山)、拾石、王神、堀ノ内遺跡(高萩)、大日向遺跡(栗坪)、向原、上原遺跡(馬引沢)、寺脇遺跡(高萩)の発掘調査の様子を撮影したパネル写真と合わせて出土品を展示し、その内容を解説している。

 展示された出土品のうち、鳥形硯(とりがたすずり)(王神遺跡)は、鳥の羽を模した硯の蓋片で、鳥形硯の出土は珍しく、関西地方で焼かれ持ち込まれた可能性があるという。

 墨書土器(ぼくしょどき)(拾石遺跡)は、住居跡や水路跡から多く見つかり、墨で人名、地名や方角などを書いた土器で、学識と文化水準が高かったことが伺える。

 阿玉台式土器(あたまだいしきどき)(大日向遺跡)は、茨城県など東関東に分布する土器で、土器の胎土にキラキラした金雲母が入るのが特徴。関東地方の東西で交流があったことが分かる。

 釣手土器(つりてどき)(向原遺跡)は、日高市で初めて発見された、大きな握手が伸びる土器で、関東地方から中部地方に分布。炎を灯す道具という説もあるが、用途は分かっていない。

曽利式土器(そりしきどき)(向原遺跡)は、山梨県、長野県を中心に分布する土器の特徴を持ち、当時の人々の交流を示す貴重な資料という。

 各遺跡の概要は次の通り。

 ■明婦遺跡(鹿山)

 明婦遺跡は日高市立生涯学習センターの南方に広がる、今から約4500年前、縄文時代中期中葉から後半の集落跡。小畔川を南に臨む、水田面から少し高くなる台地の縁に位置している。平成8年度からの区画整理事業により広範囲な発掘調査が実施され、集落の規模が明らかとなった。

 調査の結果、竪穴住居跡73軒などを検出。住居跡からは多数の縄文土器や石器が出土した。

 ■拾石、王神、堀ノ内遺跡(高萩)

 武蔵高萩駅の北側、小畔川の両岸に広がる、奈良、平安時代の遺跡。区画整理事業により平成5年度から令和2年度まで継続的に調査を実施し、多くの竪穴住居跡、掘立柱建物跡、井戸跡のほか、集落を繋ぐ道路遺構、水田耕作のためと考えられる水路跡が検出された。居住域、移動、農業施設など集落の構成要素が明らかとなったことが大きな成果。

 役人の腰帯具、漆紙、耳皿、「厨」をはじめとした多量の墨書土器と鳥形硯や円面硯、皇朝十二銭の「隆平永宝」など、役人や役所を思わせる多くの遺物の出土は、西暦716年に建郡された高麗郡を考える上で非常に重要な発見。

 ■大日向遺跡(栗坪)

 高麗丘陵の尾根上に位置する遺跡で、今から約4500年前、縄文時代中期中葉から後半の集落跡です。ゴルフ場建設に伴い平成7年度に発掘調査を実施した。日高市でも珍しい丘陵上の調査で、南側の尾根上には同時期の飯能市八王子遺跡が見える。丘陵の平坦部を利用した縄文時代のムラの立地を考える上で貴重な発見となった。調査の結果、竪穴住居跡9軒などが検出され、東関東の土器である阿玉台式土器の出土が注目された。

■向原、上原遺跡(馬引沢)

 南小畔川右岸に広がる縄文時代中期後半の集落跡。調査から両遺跡はひとつの集落である事が明らかとなった。圏央道狭山日高インターチェンジに近いことから、市が進める企業誘致による倉庫建設に伴い、平成10年から調査を実施した。調査の結果、竪穴住居跡73軒などが検出された。多量の縄文土器の中には中部地方の特徴を持った土器が多くみられる。

 ■寺脇遺跡(高萩)

高萩小学校の東側、下小畔川に面した台地上に広がる縄文時代中期後半から後期初頭の集落跡。土地区画整理事業に伴い平成9年度に調査を実施し、竪穴住居跡7軒などを検出した。敷石を伴う柄鏡形住居跡を3軒検出したほか、後期初頭の柄鏡形住居跡からは、関西地方の土器が出土し、この時期の西日本との交流を示す貴重な資料となった。

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 高麗郷民俗資料館では、ミニ展示として国史跡「高麗村石器時代住居跡」周辺から出土した土器を展示中。また、常設展示として、高麗地方の明治から戦前にかけての農業や林業、川漁業などに関する民具や日常生活用品などの資料を紹介。

 また、霊亀2年(716年)に日高市などに設置され平成28年に建郡1300年を迎えた高麗郡に関し、発掘調査の成果を基に建郡当時の高麗郡の集落分布図をジオラマで表し、映像を交えて高麗郡の誕生から発展の様子を紹介する「古代高麗郡集落ジオラマ」を設置している。

 開館時間は午前9時~午後5時。月曜休館、入館無料。問い合わせは985・7383へ。