独占インタビュー・上 新市長新井重治氏に聞く 「高齢者移動手段が課題」

自宅居間で文化新聞の取材に答える新井氏

 現職大久保勝氏との激戦を制し、飯能市長に就任する新井重治氏(68)。文化新聞は、当選の喜び冷めやらぬ新井氏に、自身のまちづくりの基本姿勢、飯能市が抱えている課題、第一に取り組むべき施策などについてインタビューした。上・下、2回に分けて紹介する。大久保氏の任期満了は8月7日。新井氏は、8月10日午前8時半に初登庁する予定。

 ──現職との接戦を制しました。勝因は。

 新井氏 私は、1年ほど前から本格的にこの日を目指して、草の根というかそういう運動に取り組んできました。そうした中で、私が訴える政策について市民の皆さんが徐々に理解をして下さったと。確かに、選挙戦もそうですが、どんどん、どんどん輪が大きくなったのを実感していました。それと、私を支えてくれた後援会の皆さん、市民の皆さんがスタートから最後まで一切崩れることなく、私を支援して下さったというのが一番大きな要因だと思っています。また、現職相手ということで、一般的に不利な立場でのスタートでしたが、選挙戦に入ってより一層、周りの方たちが一生懸命になってくれたというところもあります。

 そして、私が訴えてきた政策に、市民の方々が共感して下さったということ。私が掲げている『市民あっての市政』『市民中心の市政』を運営するということが、市民に受け入れられたのかなと思っています。

 ──草の根運動を1年前から展開してきての勝利。その瞬間のお気持ちは。

 新井氏 飯能駅北口駅前通り線に開設した選挙事務所に近い妻の実家で、ケーブルテレビを見ていました。そしたら、画面が切り替わって「大久保陣営で動きがあったようです。大久保候補が敗戦の弁を述べています」と言っているんです。びっくりしました。その瞬間、「勝った」と思いました。本当に感激をしました。今まで経験したことのない、鳥肌が立ったというか。妻は涙をぼろぼろこぼしていました。

 嬉しいのと、市民の皆さんの期待に応えなければいけないという強い思いがこみ上げてきました。そして、一刻も早く事務所にいって皆さんの前でお礼をしたいという一心で、妻と事務所へ向かいました。

 急ぎ足で事務所に向かったのですが、事務所が見えたら、外に人が溢れていました。吉田後援会長に出迎えていただき、やったぞと。体全体で感激でした。

 ──支援してくれた有権者には。

 新井氏 市政運営を期待していただいたわけですので、1日も早く、仕事で皆さんにお返ししたいという思いで、いっぱいです。政策についても皆さんと協議してというか、私のモットーとしている『対話重視』で、一生懸命、応えていきたいと思います。私も42年間、行政経験があるので、それを生かして政策展開をしていきます。それには、市民の皆さんの協力がないとできませんので、市民の方に説明、意見をお聞きしながら仕事でお返しをしていきたいと思っています。

 ──現職、大久保氏について。

 新井氏 8年前、沢辺市政から大久保市政に代わり、2期8年、飯能市のまちづくりをリードしていただいたこと、評価したいと思います。そういった中で、予算の使途についてはまったく私も疑問がないわけではありませんが、やはり戦いは終わったので、清々しいというか、今までの8年間に感謝申し上げ、しっかりと引き継ぐところは引き継ぎ、新たに展開していく政策については、私の考えで進めていきたい。

 確かに、メッツァの誘致、ノーラ名栗、阿須山中とかいろいろ市民に投げかけていたわけですが、受け入れられたところもあるでしょうし、未だなかなか難しいというところもあります。その辺については、私は私なりにもう一度、検証というか、どういう形か分かりませんが検証させていただき、引き継ぐところは引き継ぎ、改めるところは改めるという市政運営を心掛けていきたいと思います。

 ──選挙期間中、自身のまちづくりの基本姿勢は市民との対話、対話重視の市政と強調してきました。再度、お尋ねします。市政運営のモットーは。

 新井氏 私は42年間の行政経験の中で、身に付けてきたというか、心に刻んでいるものは、一つの業務、施策を行うのに地元に出向いて直接、市民の方、地権者の方と膝を交えて、時間をかけて、お互いが納得いくように、できるものはできる、できないものはできないと、はっきりと申し上げてきたつもりです。それが相手に通じ、合意点を見出して一つの成果を挙げてきた。ですので、やはり私は市民との対話を重要視して、それこそ『市民あっての市政』『市民のための市政』をモットーに、徹底的に取り組んでいきます。

 もう一つ、毎年度の決定した予算について、各地域に出向いて今年はこんなことをやります、この地域にはこんなことを計画していますと、何かご意見をということで市民の方からご意見を頂戴する。そんな取り組みをしていきたいです。ただ、コロナ禍ですので、現状での開催は非常に難しいです。そういう取り組みは行っていきます。

 ──年度替りだけではなく、例えば9月議会閉会後、地域に出向いて、地域との対話集会的な会合を開くお考えは。

 新井氏 まさにそれを私も考えていました。くどいようですが、コロナがどうかというところがありますが、やはり就任させていただいた、また1回目の9月議会が終了した頃を見計らって、各地域に出向いて、ご挨拶というか、市の考え方などを伝えられればよいと思っています。できるように取り組んでいきたいですね。市からの情報提供はなくても、市民の皆さんから意見をお聞きする場は必要ですから。

 ──飯能市が抱えている課題について。

 新井氏 一番大きなのは、少子高齢化のスピードが一段と進んでいること。それに伴う、山間地域、交通不便地の高齢者の移動手段の確保だと思います。都市基盤もそうですが、市全体を見ますと、高齢化のスピードが進んで高齢化率が高く、そういった中で移動手段の確保がされていないところがあります。

 吾野・東吾野については有償運行で始まりました。加治・精明についても、乗合ワゴンが実証運行ということで、来年度から本格的になると思いますが、まだまだどちらの地区についても十分ではないと思います。これらをどういうふうに改善していくのかも私の役割だと思っています。また、原市場・南高麗・名栗方面については国際興業バスが運行していますが、それらの利用者については「彩京のびのびパス」(65歳以上が国際興業バス全線乗り放題となるチケット)への補助が出せないかと考えています。

 乗合ワゴンの関係では、使い勝手の面。大きな進歩ですが、自分の時間に合わせて利用したいという点がちょっと。それであれば、例えば75歳以上の移動が困難な方に対して、タクシーチケットを配布するということも検討しなければいけないと思います。また、75歳以下で免許返納した方には、タクシーチケットを交付するということも考えたいです。広い山間地域を抱えているので、私は移動手段が一番大きな課題と思っています。

 ※22日はカラー判のため、次回新井氏インタビュー記事は27日付けに掲載します。