東京五輪聖火リレー 馬上でトーチ、聖火つなぐ 地域の歴史・文化アピール

第9走者の大室さん(左)から聖火を引き継ぐ馬上の中村さん

 東京オリンピックの聖火リレーが6日、日高市で行われ、高麗神社から巾着田まで約3・5キロを10区間に分け、10人のランナーが約1時間かけて聖火をつないだ。

 同市は地域の歴史・文化の魅力を生かした演出を行う特殊区間として、歴史的にゆかりのある高句麗の「騎射文化」にちなんだ乗馬によるリレーが盛り込まれ、沿道では多くの人々がランナーを見守った。

 日高市を走った聖火ランナーは、公募で選ばれた岡野和男さん、石垣秀峻さん、戸賀﨑仁さん、早藤真紀さん、高木美香さん、林利浩さん、坂本徳雄さん、金川桂子さん、大室恵美里さん、中村葉子さんの10人。

 このうち第1走者の岡野さん、最終走者の中村さんが乗馬を担当。また、ユネスコ世界遺産に登録されている高句麗古墳群の壁画をモチーフに再現した古代装束に身を包んだボランティアや地元の小中学生などが参加した。

 梅雨空の曇天だったが、雨に見舞われることはなく、県の実行委、警察・消防のほか市職員や関係団体など250人以上が警備や誘導にあたり、新型コロナ感染拡大防止のため、周囲の人との適切な距離を保ち、大声を出さず拍手での応援を呼び掛けた。

 第1走者を務めた岡野さんは日高市で生まれ育ち、現在は飯能市在住。高校生の頃から空手を始め、30歳で道場師範となり、約30年間で1000人以上の弟子を育てた。昭武館カラテの館長、日本国際空手協会副代表を務める。今回の東京五輪で空手が正式種目となり、「自分にも何かできないか」と聖火ランナーに応募した。

 高麗神社の御神門前をスタートした岡野さんは、手を振りながらゆっくりと参道を抜け、鳥居前で華やかな高句麗衣装を身にまとったボランティアの歓迎を受けると、カワセミ街道に待機していた馬に跨って聖火を運んだ。

 今回の聖火リレーに向け初めて乗馬を体験したという岡野さん。「指導をして頂き、うまく乗れてほっとした。こんなご時世だが、1日も早く平和で安らぎのある日々が戻ってくるよう願いを込めて走った」と振り返った。

 沿道で見物した同市鹿山の三輪祥子さん(78)は、「一生に一度のことなので、とても楽しみにしていた。馬に乗って聖火を運ぶ姿は、雄大で素晴らしかった。高句麗の衣装もカラフルで素敵だった。スマホで撮影した写真は、見に来れなかった子どもたちや友人たちに送りたい」と話した。

 その後も聖火はランナーたちの手によってカワセミ街道を進み、巾着田では日高市在住の中村さんが乗馬で最終走者を務めた。

 中村さんは、先天性の脳障害を持つ6歳の長女を育てる中で、小児用車椅子について多くの人に知ってもらい、誤解や偏見をなくしたいとの思いで聖火ランナーに応募した。

 トーチを手に白馬に跨って巾着田の堤を進み、家族の待つゴール地点の曼珠沙華公園広場に到着。同広場では聖火の到着を祝うミニセレブレーションが行われ、谷ケ﨑照雄市長とともに納火式に臨んだ。

 終了後のインタビューで中村さんは「はじめは緊張と不安が強かったが、馬に乗ったら、やるしかないと覚悟が決まった。ゴールが見えた時には安心した。娘2人も会場に来ていたが、いつもと違う雰囲気に緊張して固まっていたみたい」と笑顔を見せた。

 また、最終区間では、高麗中3年の堀村玄徒さん、山田萌佳(ほのか)さん、高麗小6年の横田宥仁(ひろと)さん、水村月菜さんがサポートランナー、埼玉女子短期大学2年の秋葉夢乃さん、高麗中3年の成田麗丘(よりたか)さん、小楠絢夏(おぐすあやか)さん、高麗小6年の新井叶望(かのん)さんが乗馬ランナーを務め、色彩豊かな古代衣装を身にまとい、中村さんに随行。

 見学に訪れた高麗小・中学校の児童生徒からも応援を受け「二度とないかもしれない貴重な体験。みんなが手を振ってくれて嬉しかった」などと感想を話した。

 このほか、高麗神社ではスタート前に古代衣装に身を包んだボランティアたちによるパフォーマンス、ゴールのミニセレブレーション会場では聖火が到着するまでの間、元プロ野球選手で野球解説者の里崎智也さんを招いてのトークショーが行われ、来場者を楽しませた。