旧東吾野小跡地に通信制高校 「(仮称)わせがく夢育高等学校」

大久保市長に要望書を手渡す早稲田学園の守谷理事長(中)、連絡協議会の石田会長(右)

 飯能市の旧東吾野小学校跡地に来年4月、定員630人の新たな通信制高等学校の開校が計画されている。

 開校を予定しているのは、学校法人早稲田学園(守谷たつみ理事長)の「(仮称)わせがく夢育高等学校」。

 このほど、小学校跡地を利用する同学園と、東吾野地域の代表者で構成される旧東吾野小学校利活用推進連絡協議会(石田安良会長)が飯能市の大久保勝市長を訪問し、「東吾野地区の活性化、市全体の発展のため、旧東吾野小学校に地域と連携した新たな通信制高等学校の開校を目指し、市を含めた三者で具体的な協議を進めていきたい」と要望した。

 市によると、平成31年4月に当時の東吾野小学校、西川小学校、吾野小学校が統合して奥武蔵創造学園奥武蔵小学校が開校して以降、市は旧東吾野小の利活用について、地域の発展につながる跡地利用を目指して、令和元年11月から令和2年10月まで文部科学省「みんなの廃校プロジェクト」に登録し、広く全国に周知。

 「多くの民間企業・団体等から問い合わせがあり、早稲田学園から特に大きな興味・関心を示して頂くとともに、地域の発展につながる取り組みについて、地域の皆様と意見交換をしたいという熱心な申し出があった」という。

 市は、地域住民の考えをより反映させ、地域の発展につながる跡地利用を実現させるため、市で公募選定するよりも跡地を利活用する民間企業・団体と地域関係者が協議し、双方が共に望む利活用策を見出す方針を示した。

 東吾野地区の大字ごとに選出された代表者31人による旧東吾野小学校利活用推進連絡協議会が組織され、同協議会と早稲田学園が昨年11月14日に「東吾野地区の地域活性化に向けた連携及び協力に関する基本協定」を締結、旧東吾野小の利活用、地域振興・地域福祉、生徒の健全育成などに関して協議を進めてきた。

 早稲田学園は、わせがく高等学校(単位制・通信制、普通科)と大学受験で有名な早稲田予備校を運営する学校法人。

 わせがく高等学校は千葉県に本校があり、キャンパスは同県、東京都、茨城県内などとともに埼玉県内では、川越(脇田町)と所沢(東町)に置かれている。

 協議の中で早稲田学園は「地域の教育力を活用し、自分自身の特長や可能性を再発見し、社会で自立した生徒を育成する」として、学習指導ではハイブリッド授業、幅広い学力レベルへの対応、探求活動に寄る課題解決能力の育成、地域人材を活用した授業・部活動の展開を計画。

 地域との連携では、生徒を多彩な地域行事等へ参加させ自己肯定感・有用感の高揚につなげ、ICT活用による地域の高校をはじめ小中学校・大学との交流・連携、自然保護活動等の実施、地域の賑わい創生事業の企画・運営、地域への施設の提供などを行う。

 また、災害時には地域住民の避難所として学校を開放するとともに災害支援に協力、平常時には地域住民のレクリエーション、健康づくり、コミュニティの場として、校庭や体育館、校舎を開放する考えを示した。

 連絡協議会は「同学園の取り組みは、地域住民にとって、将来の社会を背負って立つ青少年の夢を育むことに携われる喜び、やりがい、生きがいにつながり、多くの青少年の声が聞こえ、姿を見かけ、コミュニケーションを図ることで、大きな活力につながり、地域貢献へ大きな期待が持てる」として、「人口減少と少子高齢化が進んでいるものの、豊かな森林、自然環境に囲まれた中で、良好な地域コミュニティ、活発な地域活動が展開されている東吾野地域でこのような事業が展開されることは、地域住民にとって大変喜ばしく、東吾野地区の活性化、飯能市の発展につながるものと確信し、新校の基本コンセプト、事業計画等に全面的に賛同し、学習指導や地域連携において、できる限りの協力、連携を図っていく」とした。

 新校の開校に向けた手続きの第一段階となる設置計画概要署が認可権者の埼玉県に受理され、3月30日付で適当と認められたことから、今回、市を含めた三者で具体的な協議を進めていけるよう、市へ要望書を提出した。

 飯能市役所へは早稲田学園の守谷理事長、わせがく高等学校の岩澤正明副校長、尾林敏治教頭、新崎千洋センター長、推進連絡協議会の石田会長、濱中政雄さん、中村順司さん、町田千春さんが訪れ、守谷理事長、石田会長が大久保市長に要望書を提出。

 守谷理事長は「通信制の高校をもっと広げて一般的にし、自ら情報を発信できる人材を輩出したいと考えている。不登校生が情報発信できるということが、未来の職業の新たな人材につながっていく。情報というものは、自然やさまざまな活動での体験があって初めて発信できる。そのような中、素晴らしい伝統がある学校と地域を利活用させて頂きたいと考えた」。

 石田会長は「地域の振興には学校というのは欠かせない大きな要素。新校運営にあたっては地域の教育力を頂きたいとの話があり、小学校の利活用、地域振興・地域福祉、青少年の健全育成の3本柱を立て、話し合ってきた。今後、飯能市と連携をしていかなければならない事項もたくさんある。要望書という形で提出させて頂く。地域だけではなくオール飯能体制でさまざまな形で子どもたちの育成に携わっていけたらありがたい」と挨拶。

 大久保市長は「素晴らしい報告と要望を頂いた。奥武蔵創造学園の統合は発展的統合ということで始まった。跡地利用についても、早稲田学園の皆さんに飯能市がいいと言って頂き、地域の皆さんとの思いが一つになり、早急に対応できたことは、この上ない喜び。飯能市は日本で一番の教育を掲げており、主役は子どもたち。市としても皆さんの思いにしっかりと応え、より実りのあるものにしていきたい」などと述べた。