震災10年、法光寺で法要 オンラインで被災地とつなぐ

法要を行う法光寺の大野住職

 東日本大震災の発生から10年を迎えた11日、飯能市坂石町分の法光寺(大野文敬住職)で「東日本大震災復興十年記念法要」が営まれた。

 同寺には震災で津波被害に遭った宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の東禅寺から預かった梵鐘が設置されており、再建を遂げた東禅寺とオンラインでつなぎ、同時に法要を営んだ。

 参列者が順番に鐘をつき、震災発生時刻の午後2時46分に合わせて黙祷を捧げ、犠牲者の冥福と被災地の復興を願った。

 法光寺の大野住職(61)は、東禅寺の三宅俊乗住職(61)と大学時代の同級生。東日本大震災の際、閖上地区は津波によって多くの犠牲者を出し、東禅寺は本堂が大きく損壊し、梵鐘や墓石などあらゆる物が波に飲まれ、三宅住職の両親や多数の檀家が亡くなった。

 震災後、大野住職は僧侶仲間と共に東禅寺に何度も足を運び、物資の支援やがれきの片付けに協力。震災から3か月後、がれきの中から大梵鐘、旧梵鐘、伝鐘の3つの梵鐘が見つかったことから、東禅寺の再建まで法光寺で預かることとし、2011年10月に3つの梵鐘を引き取った。

 以降、法光寺の境内に仮設鐘楼を作って参拝者が鐘をつけるようにするとともに、震災の翌年から飯能市の中央公園を主会場に開催されている「震災復興元気市」で鎮魂供養復興祈願を続け、震災から7年後の2018年6月には、東禅寺の修復が進んだことに伴い、大梵鐘と伝鐘の2つを返還、旧梵鐘については三宅住職の意向もあり、引き続き法光寺で預かることとなった。

 10年の節目を迎え、本来なら震災復興元気市の会場に梵鐘を移して供養を行うはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響で元気市は昨年に続き今年も中止に。そこで、法光寺境内を会場に、東禅寺とオンラインでつないで同時に法要を営むことを計画した。

 会場にはオンライン用のモニターが設置され、東禅寺と同時に法要を開始。近隣の僧侶、元気市実行委員会の関係者、周辺住民などが参列し、読経後、参列者が1人ひとり鐘をつき、震災発生時刻には東禅寺の方向に手を合わせて目を閉じ、黙祷を捧げた。

 オンラインを通じ、東禅寺の三宅住職は、「飯能の方々には大変お世話になり心から感謝申し上げる。コロナ禍で行き来できない状況が続いているが、オンラインで結んで法要の機会を頂いた。大野住職には震災直後から閖上に足を運んで頂き、多大なご支援を頂いた。震災からはや10年の歳月が流れた。10年ひと昔と言うが、決して昔のことではない。まだまだ、東日本大震災は続いているという思いで一杯。今後も、亡くなられた方の供養を続け、未来に向けて復興への歩みを進めていきたい」。

 法光寺の大野住職は、「本当は現地を訪ね、直接顔を合わせたかったが、オンラインという形で実現することができた。震災から10年、私は閖上の皆さんが辛い経験を乗り越えて頑張っている姿を見てきて、絆という言葉を学んだ。今、コロナ禍にあって、争い事が起き、自分の事しか考えられないような世界になってしまうのが心配。今こそ現地の人々の姿を見習って、乗り越えていかなければならないと思う」と語った。

 参列者からは「あの震災以降、災害が来た時にどうするか、と常に考えるようになった。10年経ったが、復興支援はこれからも必要」との声があり、震災復興元気市実行委員長で法光寺総代の金子堅造さんは「震災以降、何度も東北に足を運んだが、その度に私の方が現地の人々から元気をもらってきたという思いがある。元気市はコロナの影響で昨年も今年も中止となってしまったが、来年こそは実施できるように頑張りたい。東北の人たちが心から笑えるような毎日が来るように、できる限りのことをしていきたい」と話した。