飯能の「山里に咲いた芸」 説経節と人形芝居、特別展や公演

落合家に伝わる「片瀬人形」

 飯能市立博物館「きっとす」と市民会館は、同市虎秀の落合家伝来の「落合家人形芝居用具及び説経節関連資料」が今年3月に市有形民俗文化財に指定されたのを記念し、博物館・市民会館連携事業「山里に咲いた芸」と題し、市立博物館で18日から12月13日まで特別展「説経師・薩摩千代太夫と幻の“片瀬人形”」を、また、市民会館大ホールで12月6日に公演会「説経節と八王子人形」を開催する。

 説経節は、説経浄瑠璃とも言い、中世を起源とし、仏の教えを広めるための説経に節をつけた語りの芸で、江戸時代に三味線伴奏や人形芝居を加えて人気が高まった。多摩地域や埼玉県西部地域、秩父地域など江戸近郊の各地にも広がり、かつては説経節を語る説経師が各地で活躍した。

 虎秀の落合家は、山林経営などの傍ら幕末から昭和初期にかけて、説経節を伴奏に演じる人形芝居の座元として、また説経節の語り手である太夫として活動。明治から昭和にかけて親子で活躍した三代目、四代目の薩摩千代太夫を輩出し、特に四代目薩摩千代太夫は、一世を風靡した説経師・初代若松若太夫も一目置いた名人だったと言われている。

 また落合家では、後に「片瀬人形」と称される人形芝居も興行していたが、活動の期間の短さから「幻の人形芝居」と呼ばれている。

 市は、落合家に伝わる片瀬人形をはじめ人形芝居で使われた衣装、小道具、舞台装置などの道具類、説経節の語り手の衣装や太夫の台本といった関連資料508点を、かつての飯能の文化・芸能を現在に伝える貴重な資料として、今年3月19日付で市の有形民俗文化財に指定した。

 18日から博物館特別展示室で始まる特別展では、これらの資料を展示し、説経師として活躍した薩摩千代太夫と人形芝居の歴史を紐解く。

 関連講座として、説経節若松派家元の三代目若松若太夫氏を講師に招いての「説経節若松派と飯能」が11月1日、日本大学教授の上田薫氏を講師に招いての「説経節考─親の物語から子の物語へ─」が11月15日に開かれるが、既に定員に達したため受付終了となっている。

 12月6日に行われる市民会館での公演には、三代目若松若太夫、説経節の会、八王子車人形西川古柳座が出演し、演目は「三人三番叟」「信太妻 葛の葉子別れの段」「小栗判官 矢取の段」。八王子車人形の祖・初代西川古柳は、飯能市阿須の出身で、舞台上で飯能ゆかりの八王子車人形と説経節がコラボレーションする。

 公演は午後1時開場、1時半開演。チケットは1000円(全席指定)、市民会館窓口、市役所地域活動支援課で販売している。

 問い合わせは、特別展については博物館972・1414、公演会については市民会館972・3000へ。