市、有間橋で修繕工事着手 ひび割れ進行すると、損壊の恐れ

住民生活、観光面でも重要な有間橋(左が名栗湖方面)

 飯能市下名栗地区の県道青梅秩父線から有間ダムへ向かう市道の入間川横断部に架かる有間橋について、市は橋りょう両側の橋台にひび割れが発生しているとして、今年度中にも修繕工事を行うことを決めた。

 有間橋は橋長39メートル、幅員8・5メートルのコンクリート橋。昭和51年に架橋され、今年で架設44年経つ。カヌー工房などが立地する有間ダム、さわらびの湯、ノーラ名栗へのアクセス橋など、観光視点からも市にとって重要な橋と位置付けられている。

 市は、平成30年度に有間橋で橋りょう定期点検を実施。そうしたところ、早期に補修が必要な段階にまで劣化が進行している健全判定度Ⅲという結果に。

 健全判定度Ⅲは、早期措置段階という判定で、構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態にあること。

 市はさらに、有間橋の補修方法などを検討するため、令和元年度に詳細調査に着手。大規模な補修が必要になる見込みとの調査結果を得た。

 定期点検で、橋りょう両側の橋台に遊離石灰(雨水などとともに、ひび割れた部分から滲み出してくる白色状のもの)を伴うひび割れが多数発生していることが確認。その後の詳細調査では、そのひび割れを起こす原因について特定するため、コンクリートのアルカリ成分測定や圧縮強度試験などを実施。

 結果、漏水や遊離石灰の状況から総合的に判断、ASR(アルカリシリカ反応)が損傷の原因であることが判明し、今後、ASRの対策を施さなかった場合、加速度的な劣化の進行が予想されるため、早急な対策が必要との結論に至った。

 ASRとは、コンクリート中の骨材のシリカ鉱物とセメントのアルカリ分との反応によって、アルカリシリカゲルが形成される過程。さらに、アルカリシリカゲルが水分を吸収して膨張する過程のこと。これによって、コンクリート表面にひび割れが発生するという。

 この橋台のひび割れ対策として、今年度に実施するのは、①ASRを引き起こす水分を遮断するための橋台への止水塗装②ASRそのものを抑制するための亜硝酸リチウムの橋台への注入の2点。亜硝酸リチウムは、コンクリート補修用に開発された工業用化学製品で、リチウムイオンがアルカリシリカゲルを非膨張化させる効果があるという。

 ただ、亜硝酸リチウム注入工法については、工事費が高くなるなどの欠点があることから、市は効果的かつ経済的となるような施工方法について検討を進めている。

 有間橋の橋台のひび割れが進行すると、橋台が橋の荷重に耐えられず、損壊する恐れがあるという。