織物で航空写真再現 マルナカが商議所新会館に寄贈

大会議室に設置された織物の航空写真

 飯能を代表する老舗織物メーカーのマルナカ(川寺、中里昌平社長)が市内の航空写真を織物で再現し、飯能商工会議所(矢島巖会頭)の新会館(本町)へ落成記念として寄贈した。

 航空写真の縮尺は約2500分の1。国土地理院から分割された約50枚の航空写真データの提供を受け、これをつなぎ合わせて1枚の写真とし、素材には経年劣化に強いナイロン糸を使用。ヨコ糸にシアン・マゼンタ・イエローの3原色と黒・白、タテ糸には透明糸を用い、ドイツ製のドルニエ・レピア織機を使って高さ1・8メートル、幅4メートルの大きさに仕上げた。

 範囲は市街地を中心に、北は宮沢湖、南は阿須の駿河台大学、東は芦苅場、西は小瀬戸や南高麗地区周辺までを収め、中央付近に位置する新会館の場所には目印として「商工会議所マーク」を織り込んだ。

 マルナカは明治元年(1868年)創業。かつては汎用性の高い織物を生産していたが、海外製品が市場を占めるようになると、高い技術力が必要な少量多品種な製品づくりに移行。柄が複雑な婦人服地の受注にこだわり、今では有名デザイナーの要望に応え、さまざまな素材を使った特殊織物を手がけている。

 飯能商工会議所の前会頭で現在は顧問を務める同社の中里社長は、新会館の完成にあたり「自社の技術を生かして何か記念になるものを」と昨年から思案。過去にも織物で航空写真を再現したことがあり、平成28年に上田清司前知事の企業訪問を受けた際、社内に展示していた航空写真に知事が高い関心を示していたことを思い出し、新たに製作することに。

 伝統の織物技術と最新のデジタル技術を駆使して再現された航空写真は、地元西川材を多用して作られた新会館の大会議室に展示され、四方には西川材の木枠を取り付けた。

 木材と織物が栄えた飯能の歴史を象徴するような組み合わせ。中里社長は「市内のなるべく広い範囲が収まるように、それでいて路地や住宅など細かな部分まではっきりと分かるように心掛けた。50枚の写真データを自然な形に組み合わせるのが大変だった」と振り返り、商議所の新拠点完成にあたり「コロナの後は生活そのものが変わってくる。将来を見据え、地域から創出するものを大切にし、観光飯能の再興にも期待したい」と話す。

 大会議室に展示後、その存在感に職員も感嘆の声を上げ、木崎幸長専務理事は「航空写真を細密に織物で再現するという技術が素晴らしい。スケールも大きく、飯能の発展に向けて頑張ろうという気持ちになる。皆さんに見て頂けたら」と話している。