教諭たちによる門出のアーチで見送られる6年生

教諭たちによる門出のアーチで見送られる6年生

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日高市は、政府、県からの要請を受けて2日に市内全小中学校(小学校6校、中学校6校)で臨時休校措置を開始した。休校は春休み開始となる今月26日まで実施され、修了式は行わない。卒業式については当初未定としていたが、卒業生と教職員のみの出席、時間短縮による形式で中学校は13日、小学生は24日に実施することを2日に決定した。

 休校措置が決まった先月28日、保護者に対しては市教委や各学校からメールと書面でその内容が知らされ、各校では、教諭たちが児童生徒への説明や休校中の学習課題の配布といった対応に追われた。この時点では卒業式の見通しも立っていなかったことから、卒業を迎える児童生徒からは「えっ、きょうでもうみんなと会えないの」「卒業式はどうなっちゃうの」といった不安の声が上がった。

 児童数914人、教職員70人と市内で最も大規模校となる高麗川小学校では、28日は本来、恒例行事となっている6年生を送る会「ありがとうの会」が開かれる予定だった。しかし、新型コロナの影響により送る会を含め予定していた複数の学校行事が中止となった矢先、今度は臨時休校が決まった。  

 「長年教員をしてきましたが、こんな経験は初めて」と稲村浩之校長。児童の安全を守ることが第一との状況は理解しながらも、休校措置の決定から土日を挟んですぐ実施という時間的猶予の無さに、教職員の間に動揺が広がった。  

 それでも、残された時間で子どもたちのために何ができるか職員会議で相談。特に卒業を迎える6年生のために、送る会で各学年が予定していた出し物を学年別にビデオで撮影し、編集して6年生が教室で視聴できる時間を設けた。また、卒業式の見通しが立っていなかったことから、下校時には校舎前に集まった6年生に稲村校長が門出の言葉を贈り、教諭たちが花のアーチを作って送り出した。   

 6年生を前に稲村校長は、「色々な事が叶わなくなり、とても残念で、心残りです」と心境を吐露した上で「この予測不能な変化の激しい時代を切り開き、たくましく生きていって欲しい。みんなは複雑な思いを抱えながらこの時を過ごした。だからこそ一緒に過ごしてきた仲間を大事にして、大人になった時に困ったり、苦しんだり、悩んだり、辛い思いをしている人に、みんなだからこそ励ませる言葉、心に届く言葉を伝えられる人になって欲しい。自分のいい所を大事にして、自分を励まし、夢に向かって歩んで欲しい」などとメッセージを送った。  

 アーチをくぐり、教諭たちに見送られた6年生の中には、友人や教諭と学校で会えるのが最後かもしれないと涙を流す姿も多く見られ、「ニュースで知って、自分の学校はどうなっちゃうんだろうと不安で登校した。本当に休校になってしまい、心の準備が全然できていない」「先生やみんなとこんな形でお別れするのは寂しい。卒業式だけはやってほしい」などと口にした。

 また、市内中学校に目を移すと、中学3年生は先月28日は県立高校の入試日となったため、私立進学者など一部生徒のみが登校。こうした生徒は短縮授業のため休校措置が決定する前に帰宅し、自宅で保護者宛のメールで2日からの休校開始を知ったという。

 3年生女子は「担任の先生からは、2日も県立高の受験日なのでまだ学校があるはずと聞いていたので、すぐに休校が始まると知り驚いた。3年生は教室でみんなが揃うことのないまま、休みになってしまった。3年生を送る会や卒業遠足も中止になり、卒業に向けて、みんなに感謝の気持ちをどうやって伝えようか考えていた。このままでは気持ちの整理がつかない。どんな形でも卒業式だけはやってほしい」と思いを語った。

 急展開に保護者の戸惑いも大きい。小中学生を抱える母親は「教育委員会や学校から立て続けにメールが来て、事態を受け入れるだけで精一杯だった。実施までが急すぎる」。小学生の男児を持つ共働き家庭の母親は「高学年ですが、子どもだけで留守番させておくのは気がかり。仕事を休むのもなかなか難しい」などと話した。  

 市教委によると、休校期間中の児童生徒の家庭学習については各校で教諭が作成した課題、実施予定だったテスト類を家庭で行うことができるよう回答と合わせて配布したほか、タブレットやパソコンを使った市の自宅学習システムを活用してもらうなどとし、授業の遅れが心配されている点については、新年度の4月以降の授業で対応する考えを示した。 また、預け先が無く自宅で一人で過ごすことが出来ない小学3年生以下の児童などについては、保護者の送迎により学校で児童を受け入れるとしている。