飯能市地域公共交通対策協議会=交対協=(上良二会長)が29日、市役所で開かれ、NPO法人「奥武蔵グリーンリゾート」(飯能市南川、森田美明理事長)が計画した自家用有償旅客運送事業(公共交通空白地有償運送)が承認された。この事業は、奥武蔵グリーンリゾートが用意した自家用車両に、利用登録した吾野・東吾野地区住民が乗り込み、両地区内なら乗り降りが、市街地であればどこでも降車ができるという住民移動サービス。同団体は今後、県の認定を受け、年内には運行開始したい考え。

 公共交通空白地有償運送は、買い物や通院の時など移動手段が確保できない人たちのために、NPO法人や一般社団法人などが自家用車を使って有償で運送する事業。利用者は走行距離に応じて対価を支払う。実施団体が収受する対価は実費の範囲内とされ、奥武蔵グリーンリゾートは、概ねタクシー料金の半額と設定している。

 西武池袋線、同秩父線が運行する吾野・東吾野地区には東吾野・吾野・西吾野・正丸の4つの駅がある。しかし、両吾野地区は高麗川の支流を中心に多くの集落があり、住んでいる人たちの高齢化も進む。どの集落からも最寄駅までの距離があるため、車での移動を余儀なくされている。

 路線バスの運行はなく、タクシーについても営業所が遠方なため、地域住民、特に運転ができない人や免許を返納した高齢者に対して、公共輸送サービスが十分に提供されていないのが実態だ。

 奥武蔵グリーンリゾートは、吾野・東吾野地区の地域の魅力を発信し、地域の活性化を図り、安心安全に暮らせる生活環境を築こうと平成26年4月に発足。▽まちづくりの推進▽環境の保全▽保健、医療又は福祉の推進──を活動の3本柱に据え、これまでに「休暇村奥武蔵」下流の高麗川沿いに健康ウォーク用のセラピーロード約700メートルを開設。今月11日には、山の活性化の一環として林業用の作業道を利用したトレイルランニングの大会も開催する予定だ。

 地域住民が気軽に買い物や通院などに出かけられるよう、住民の移動をサポートをする「公共交通空白地有償運送」もNPOとしての重要施策の一つ。

 奥武蔵グリーンリゾートが事業化を目指す公共交通空白地有償運送は、名称を「奥武蔵らくらく交通」といい、吾野・東吾野地区に住み、利用登録をした人が利用できる。

 運行の区域は、乗車は吾野・東吾野地区だけで、降車は飯能市全域。ただ、両地区のいずれかで乗車して飯能市街地まで出て用事を済ませた後、待機を要請した同じ車両に1時間以内に戻れば、それを利用して、次の目的地(飯能市内に限る)へ向かうことができる。

 待機した状態で、吾野・東吾野地区から乗車した人以外を乗せて、そこから移動することはないということも質疑の中で強調された。

 一方、前述4駅で電車を降り、地域内の登山やハイキングなどを楽しむ観光客については、運行区域であれば利用可能とした。

 利用者から受け取る対価については、利用者の乗車した地点から降車した地点までの走行距離に応じて対価を設定する方法。

 乗車距離2キロメートルまで500円、3キロメートルまで600円、5キロメートルまで800円、10キロメートルまで1300円と設定。運送の対価以外の対価として、迎車回送料金はないが、待機料金については30分未満が無料、30分から60分については250円とした。

 交対協は、住民の生活に必要なバス等の旅客運送の確保など、市域公共交通のあり方などについて協議する「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」「道路運送法」の2法に基づく法定協議会。地域の実情に応じた公共交通の運行の合意形成も協議事項に加えられている。

 メンバーは市、県、学識経験者、鉄道・バス事業者、タクシー業者、市自治連、県土整備事務所、飯能署、観光協会など。事務局は市民生活部。

 7回目となる今交対協の議事は、奥武蔵グリーンリゾートが行おうとしている吾野地区及び東吾野地区での自家用有償運送について。同NPO法人の事務局長である平沼弘さん(飯能市議)からNPOの設置目的、活動内容、有償運送事業についての説明を受けた後、質疑に移り、最終的にこの日の会合で奥武蔵グリーンリゾートの事業計画について交対協として合意した。

 自家用有償旅客運送事業を実施しようとする場合は、県から道路輸送法の登録をうけることが大前提だが、その前段の事務として、地域の関係者、つまり交対協の合意形成が必要であり、今回、この協議が整ったことで、吾野・東吾野地区の自家用有償旅客運送は実現に向けて大きく前進したことになる。

 奥武蔵グリーンリゾートは、交対協で事業計画を了とする合意形成が図られたことから、近く県知事に自家用有償旅客運送の登録申請を行い、認可を得たなら、早ければ12月中旬には「奥武蔵らくらく交通」の運行を開始させる。

 自家用有償旅客運送の実施に当たっては、運営協議会で協議が整った上で、道路運送法により埼玉県知事の登録を受ける必要がある。自家用有償旅客運送の事務・権限については、これまで国土交通大臣から各運輸支局長等に委任されていたが、平成28年4月からは当該事務の権限が埼玉県知事に移譲されている。

 同事業で自家用車両を運行する運転者については既に、吾野・東吾野地区で複数人が登録を済ませ、「移動サービスの運転に必要な知識と心構え」「安全ルールの順守等道路交通法、道路運送法その他の関係法令に係る基礎的な知識等に関すること」など、専門家による講習を受けている。

 運転者は自己所有の車両を同サービスで使用し、実施主体から利用者を乗せて走行した距離に応じて報酬を受け取る。