内沼県議一般質問・上 県とムーミン社の連携協定は

 飯能市(西3区)選出の内沼博史県議(自民)は、埼玉県議会9月定例会一般質問に登壇、県が「メッツァ」を運営する(株)ムーミン物語と締結した「観光分野における連携協定」に基づき実施する事業について執行部の見解を質すとともに、飯能市内でも深刻な鳥獣被害の対策として、対策作業を行う者の負担減につながる「IoT」(さまざまなモノをインターネットで接続する仕組み)を活用すべきなどと提案した。連携協定による実施事業について、答弁からメッツァ来場者が地元商店街の優待を受けられるサービス、県内主要駅からメッツァへのバス運行などを考えていることが分かった。主な質問と答弁を上・下、2回に分けて掲載する。

 全質問は、次の9項目。①県西部地域の観光振興②埼玉における日本版DMOの取り組み③自転車を活用した観光振興④鳥獣被害対策⑤公立学校における暑さ対策⑥認知症対策と健康づくり⑦公共下水道事業に対する県の支援⑧県道富岡入間線の整備⑨県道飯能下名栗線の整備。

 ▽内沼県議=いよいよ今年11月9日に北欧のライフスタイルを体験できる「メッツァビレッジ」が開園する。さらに、来年3月16日にムーミンの物語を主題としたテーマパーク「ムーミンバレーパーク」のオープンも発表された。

 メッツァビレッジは、無料で北欧のライフスタイルを体験でき、自然豊かな公園機能を持つ敷地内に新鮮な地元野菜や工芸品、さまざまな北欧ブランドの商品を置いたマーケット、北欧風のレストラン、生涯学習の盛んな北欧にならったものづくりアートを体験できるワークショップなど体験できるそう。飯能市のカヌー工房、日高市のサイボク、所沢市の新井園本店など地元企業の出店も決定し、地域活性化にも繋がっている。

 メッツァビレッジ、ムーミンバレーパークのオープンをきっかけに、川越や秩父、日高のマンジュシャゲなど周辺の観光地と連携し、日帰り型が中心の埼玉県の観光を宿泊型に変えていく大きなチャンスと思う。ムーミンは海外でも人気が高く、今後は外国人観光客も多く訪れることが予想され、インバウンド対策も重要になってくる。

 今年6月、県とメッツァを運営する(株)ムーミン物語において、相互に連携し県の観光振興に取り組むための「観光分野における連携協定」が締結された。この協定により、どのような連携事業を行い、どのように県の観光振興に生かしていくのか、先ほど私の述べた意見への答えも含め、お伺いする。

 ▽産業労働部長=メッツァの開業に伴い、今までにはなかった新たな観光資源が加わるため、西部地域の魅力がますます高まる。そこで、県ではムーミン物語と観光分野における連携協定を締結し、さまざまなプロモーションに取り組んでいる。7月には延べ100万人以上が来場した香港ブックフェアに県とメッツァで共同出展し、メッツァのオープンと合わせての西部地域や秩父地域などの観光名所もPRした。8月には台湾の大手旅行会社を訪問し、川越や秩父・長瀞とメッツァを組み合わせた旅行商品などの企画、販売を働き掛けてきた。

 メッツァを核とした県内の周遊などは滞在時間が延び、おのずと買い物の機会も増え、ひいては宿泊客の増加にもつながる。今後もムーミンのテーマパークであるメッツァについて、国内外の旅行会社やメディアに対して積極的にPRしていく。

 また、協定に基づき地元商店街や県内の観光事業者と連携していくことを検討している。例えば、メッツァ来場者が地元商店街の優待を受けられるサービスや、気軽にメッツァに来られるよう、県内主要駅からのバスの運行など、さまざまな取り組みを考えている。新たな観光資源であるメッツァを起爆剤として、飯能市はもとより周辺の自治体とも連携し、さまざまな仕掛けを次々と繰り出し、西部地域のみならず県内各地への観光客誘致を図っていく。

 ▽内沼県議=飯能市ではメッツァオープンに伴い、駅から歩いて行かれる方のための遊歩道の整備や飯能駅と東飯能駅からシャトルバスを運行し、公共交通への誘導を図ることにより、利用者の利便性や渋滞の緩和に努めている。事業者においても入口道路に右折レーンの設置などの対策を行っている。

 しかし、市だけでの対応には限界があり、また周辺自治体にも影響が懸念されることから、今年8月には飯能市、日高市、入間市の3市長の連名で、県道飯能寄居線の渋滞対策について県への要望書が提出された。メッツァ周辺の県道飯能寄居線の渋滞対策について。

 ▽県土整備部長=メッツァについては、多くの観光客が訪れることが見込まれていることから、アクセス道路となる県道飯能寄居線の交通量の増加が想定される。県では、これまでメッツァへの出入口となり、渋滞が想定される県道の宮沢湖入口交差点の形状について、事業者と協議を重ねてきた。その結果、現在想定している来場者に対応できる長さの右折帯をメッツァオープンまでに事業者が整備することとしている。

 また、事業者からは来場する車の対策として駐車場は有料で、事前予約制とし、交通誘導員も配置すると聞いている。周辺地域では、現在整備中の飯能寄居線バイパスの開通を予定しており、交通の流れの変化も想定される。このため、このバイパスやメッツァ周辺交通の変化について調査を実施し、必要な対策を検討する。

 ▽内沼県議=平成29年度の県内の野生鳥獣による農作物被害額は、43市町村で1億1059万円。被害面積は49・9ヘクタールにおよび、イノシシによる被害額が最も多く、次いでシカ、サル、アライグマ、ハクビシンの5種で全体の約89%を占めている。山間部を抱える中山間地域ではイノシシ、シカの被害が特に多く、農作物はもちろんのこと森林では樹皮を剥がしたり、荒らされる被害も出ている。飯能市では住宅地の近くで車とシカの接触事故なども見受けられる。

 山間地域を抱える自治体においては、地元猟友会に捕獲を依頼したり、罠や防護柵の設置などの対策を行っているが、猟友会会員の高齢化や後継者不足に悩まされている。飯能市では有志の市職員70人による「市鳥獣被害対策隊」を組織し、被害対策に取り組んでいる。また、山間地域の原市場特では、自治会の有志で「サル対策協力隊」を結成し、対策を行っている。

 長野県伊那市では、昨年度から「くくり罠」にセンサーを取り付けることにより、獲物がかかった罠の位置を的確に把握し、猟友会メンバーの見守りの負担を減らすことができた。さらに、罠を多く仕掛けられ、獲物がかかった情報が直ぐに入るなどのメリットがあるという。このIoTを活用した鳥獣被害対策を埼玉県も取り組むべきと思う。

 ▽農林部長=野生鳥獣による農作物などへの被害対策は、農作物や木材の生産面のみならず農山村の活力を維持する上で大変重要。このため、県では市町村やJA職員などを対象にした鳥獣被害防止指導者育成研修を実施し、これまでに209人に受講して頂いた。また、国の鳥獣被害防止対策交付金を活用し、市町村やJA、猟友会などで構成する鳥獣害対策協議会が取り組む捕獲罠の購入や、シカなどを捕獲した経費などを支援している。

 森林においてはシカの侵入を防ぐ防止柵やクマの皮剥ぎを防ぐ樹皮ガードの設置などを、平成29年度までに飯能市や秩父市などの山間部1592ヘクタールで実施した。しかし、農業者の高齢化や農山村の人口減少に伴い、対策作業員の負担を減らすことが課題となっている。

 このような中、秩父地域鳥獣害対策協議会では秩父農林振興センターや農業技術研究センターと連携し、IoTを活用した囲い罠によるシカなどの捕獲試験に取り組んでいる。この囲い罠は、罠に設置した赤外線カメラの画像が手元のスマートフォンでリアルタイムで確認でき、さらにはスマホの操作で罠の扉を閉めることができる。

 29年度は秩父市荒川地区でシカの捕獲試験を行い、30年度は皆野町でイノシシの捕獲試験を行っている。IoTを活用した鳥獣被害対策は、対策作業を行う者の負担を減らす上で有効と考えており、今後とも関係部局と連携して対策に取り組む。