倒れた仲間の命救う 3人に消防協力者表彰

荒幡消防局長から表彰を受ける望月さん(手前)、小池さん(右)、石田さん

 飯能市下名栗でサイクリング中に倒れ心肺停止状態になった仲間の男性(58)に心臓マッサージを施し、命を救ったとして、埼玉西部消防局は、入間市下藤沢の司法書士・石田直紀さん(48)、同市上藤沢の会社員・望月勝利さん(56)、同市仏子の会社員・小池達也さん(51)の3人に消防協力者表彰を贈った。表彰式は飯能日高消防署で行われ、荒幡憲作消防局長から3人に表彰状が手渡された。

 倒れた男性と3人は共にロードバイクを楽しむ入間市のサイクリングチーム「チーム茶畑」のメンバーで、仕事も年代も異なる仲間が毎週日曜日の午前中に集まり、地元の入間をはじめ飯能や日高でサイクリングを楽しんでいる。

 男性が倒れたのは7月15日。この日は名栗湖(有間ダム)を目指して自転車を走らせていたが、午前9時50分頃、名栗湖入口に向かって坂道を登っている最中、自転車を漕いでいた男性が突然よろめき、崩れ落ちるようにして路面に倒れたという。

 男性の後方を走っていた石田さんが異変に気付き、前方を走っていた望月さん、小池さんも駆けつけた。「暑い日だったので、はじめは熱中症で倒れたのかと思ったが、声をかけても全く反応がなく、目を見開いた状態で脈も呼吸もなかった」。

 一刻を争う事態に石田さん、望月さんはすぐに心臓マッサージを開始、近くを通りかかったハイキング客が救急車を手配してくれたため、小池さんは家族に連絡。救急車が到着するまでの間、3人で声をかけながら交代で心臓マッサージや声かけを続けた。

 こうした迅速な対応により、男性は救急隊員に引き渡された後、救急車の中で意識を回復。その後、病院を2週間ほどで退院し、社会復帰を遂げた。

 3人のうち、望月さんは地域の防災訓練でダミー人形を使った心臓マッサージやAED訓練を受けた経験はあるが、いずれも急病人の現場に居合わせたのは初めて。仲間の命を救おうと無我夢中だったという。

 チームのサイクリングウェアを着て表彰式に出席した3人を前に、荒幡消防局長は「皆さんの勇気ある迅速な行動により、尊い命を救うことができた。当消防局では毎日100件以上の救急出動があり、件数は毎年増加の一途を辿っている。救急隊は市民の皆様の安全を確保するため努めているが、今回のように近くに居合わせた方に助けて頂くことが救命につながる一番の近道。本当にありがとうございました」と感謝を述べた。

 表彰を受けた3人は「仲間を助けようとするのは当然のことだが、命が助かって本当に嬉しい」(石田さん)、「救急車を呼んでくれた登山客や車で通りかかり駆けつけてくれた人など、多くの方の協力を頂いた。感謝したい」(望月さん)、「今後も、いつどこでこのようなことがあるか分からない。救命講習などにも積極的に参加したい」(小池さん)と話している。