山里でオフィスワークを テレワーク環境整う

2年前まで民宿だった「朋泉荘」の外観

 緑豊かな山間地域で快適なオフィスワークを──。飯能市は、サテライトオフィスに適した「特選物件」と充実した助成制度「飯能市サテライトオフィス等促進事業補助金」を用意し、山間5地区に本社機能及び本社機能の一部を設置する企業の誘致を図っている。

 寝不足状態で早朝から起床し混雑の著しい電車に長時間すし詰め状態での通勤は、体力的に厳しくストレスも大きい。満員の通勤電車に揺られる事もないゆとりの通勤と、緑の癒しの空間が仕事場でも楽しめる働き方を、多くの人が望んでいるが、実現は困難で夢に終わる事が少なくない。しかし、インターネットなど情報通信環境の発展により、本社から遠くても、それぞれの労働者が離れていても仕事に差し支えない働き方(テレワーク)が可能になってきた。

 サテライトオフィスは、本社から衛星(サテライト)のように遠く離れた所でも、本社に通勤して仕事をするのと変わらない作業ができる職場の事。

 飯能市は、大容量で超高速ネットワークも可能な光ファイバー網が市内全域に整備され、山間地区でもテレワーク環境が整っている事に着目し、山間5地区(吾野、東吾野、原市場、名栗)の雇用拡大と定住人口増を図るため、この5地区に本社機能あるいは本社機能の一部を移転する企業の誘致策として、「飯能市サテライトオフィス等促進事業補助金」制度を設けるとともに、サテライトオフィス設置に好適な「特選物件」を用意し、進出企業を募集している。

 特選物件は、上名栗地区で平成28年10月まで、民宿「朋泉荘」が営まれていた建物で、敷地面積約350平方メートル、木造二階建て延べ床面積約150平方メートルの8K(8畳4部屋、6畳4部屋、キッチン、トイレ3、風呂2)。民宿だったため、ふとん、食器等の生活必需品は完備され、寝泊りなど生活する事も可能で、長期研修や福利厚生にも利用可能。バルコニ―からの眺望にも優れ、入間川の清流まで徒歩1分。

 また、交通は、池袋駅から西武池袋線特急で飯能駅まで約40分、国際興業バスを利用し飯能駅から最寄りのバス亭「机」まで約45分、机から徒歩1分。車利用の場合、青梅インター及び飯能駅から約30分。

 さらに、地区の中心部にあり、公共施設も近い。

 賃貸料については物件所有者と相談。和室をフローリングにしたり、敷地に倉庫などを設置する事も、所有者との相談次第。

 ほかの物件を希望する場合は、飯能市空き家バンク制度も活用できる。

 補助対象は、市内に事業所を持たない創業から3年以上を経過した事業者で、山間5地区に本社または本社機能の一部を有するオフィスを設置し、同所で2人以上を雇用して3年以上事業を継続する事が要件。また、市では地域住民との交流も図れればと、願っている。

 オフィス機能の一部開設などの条件を満たせば、業種に限定はないが、インターネット関連事業、デジタルコンテンツ制作関連業者、テレワーク関連事業などの進出を想定している。

 補助対象となる経費は、①オフィス設置・改修費=初年度だけ(対象経費の2分の1、上限50万円、賃貸料と併用の場合、上限86万円)②賃貸料=事業開始から3か年(対象経費の2分の1、上限は月3万円)③通信回線・機器使用料=同(同、上限は月2万円)④市内新規雇用人件費=同(市内在住者を新規雇用するか、従業員が市内に転入した場合、一人に付き10万円、上限4人分40万円)。最大350万円の補助金を支給する。

 平成28年度から始まった事業で、これまで進出した企業は、事業初年度に話がまとまり吾野の坂元に進出した(株)FIC(本社:東京板橋区、中田英明社長)。平成3年設立の金融部門に特化したITプロフェッショナル集団。

 事業開始から2か年を過ぎ、実績は1社だが、29年度からは市で推奨物件を用意し、7社から前向きの感触が得られたことから、今年度は、予算を250万円から310万円に増額。情報通信産業関係の総合企業からベンチャー企業まで積極的誘致活動を図ると共に、空き家や廃校の活用を検討するなど事業の充実促進を図る。

 問い合わせは産業振興課(電話986・5083、電子メールsangyo@city.hanno.lg.jp