西川材の普及促進目指す 飯能市森林認証協発足

新会長に選出され挨拶を行う井上さん

 西川材のブランド化と、一層の普及を目指して、飯能市森林認証協議会設立総会がこのほど、市役所内で開かれ、会の規約や平成30年度事業計画及び収支予算等4議案が原案通り可決し、同会の初年度がスタートした。初代会長には、会の発足を推進する準備委員会委員長を務めてきた「き・ま・ま・工・房木楽里」の井上淳治さん(㈲創林)が、満場一致で選出された。

 森林認証制度は、持続可能な森林の利用と保護等を目的として、適正に管理された森林と、その森林から産出された木材を適正に扱う加工、流通業者に認証を与え、その木材・木製品に認証ラベルを付ける環境ラベリング制度の一つ。認証は、独立した第三者機関が、環境、経済、社会の3つの側面から一定の基準を基に行う。

 認証ラベルが張られた木材や、その木材から作られた木材製品を、環境に優しいブランド木として、消費者に選択的に購入してもらい、流通を活性化させ、認証森林からの木材産出の販路を確保し、その事で、森林経営の基盤と品質管理の一層の充実を図り、ラベリングを希望する山林所有者も増加させ、持続的な森林育成、加工、流通のサイクルを築き上げていく事が目的。

 平成6年(1994年)、林業者、木材取引業者、先住民団体、自然保護団体等が集まり設立した国際NGO「森林管理協議会(FSC)」の提案がきっかけ。

 世界的な潮流になっており、市内には、最終消費者に届く段階前の伐採業、製材業、製造業、流通業、印刷業、小売業など加工流通段階の事業者が認証される「CoC認証」を取得した事業者はいるが、適正な森林管理基準を満たした森林が認証される「FM認証」を取得した森林管理者又は所有者は、まだいない。

 FM認証を受けた森林が存在しないため、現状では、西川材の認証材を市場に流通させる事ができない状況にある。

この現状に危機感を募らせた民間事業者と市が連携し、FMとCoCの一体的取得によって、西川材の認証材の市場への流通を目指し、協議会は設立された。森林認証の取得に向け、市、森林所有者、加工業者等関連業者がグループとなって活動していく。

 森林認証を実施する管理団体として、草分け的存在で世界的に権威のあるFSCのほか、欧州のPEFC、日本の林業団体、環境NGO等が設立した(一社)緑の循環認証会議(SGEC)がある。SGECは、人工林のウエートが高く零細森林所有者が多い日本の実情に応じた制度で、飯能市の実情にも合致するため、発足した飯能の協議会はSGECの認証を目指す。

 持続可能な森林管理が行われ、生物多様性に配慮し、水と土壌を守り、地球温暖化防止に役立つ森づくりが行われている森林が、FM認証を取得するポイント。

 CoCは、十分な安全管理体制のもとで、木材の購入・伐採・運搬を実施し(素材生産業者)、製材・合板・集成材・ボード・製紙等の製造工程では、認証林産物を分別管理し(製材等一次加工業者)、住宅建築・家具製造等の工程でも、製品がラベルにより管理され、消費者に確実に認証材製品を提供(施工等二次加工業者)する事が認証取得ポイント。

 同会設立に向け、2月に同会設立準備委員会が立ち上がり、これまで会議と説明会が開催され、協議会設立準備が進められていた。

 同会は、今月中に森林認証審査機関と契約し、10月に、森林認証の審査、12月には認証を取得し、来年1月から、森林認証の活用、普及啓発に取り組んで行く事を計画している。

 FM部会とCoC部会の2つの部会が設置され、FM部会は西川広域森林組合員を中心に、市など森林所有者15団体で構成され、CoC部会は、素材生産業者、木材製材業者、木材加工・流通業者など21団体で発足。

 FM部会は、森林認証基準等を遵守した森林管理等を行い、CoC部会は、CoC認証基準等を遵守した認証林産物の分別管理を行い、認証林産物の販売に関する事に取り組んでいく。

 井上さんが新会長に選出されたほか、副会長には、西川広域森林組合の小峰幸平さんと、叶木材㈲の本橋勝さんが選ばれ、監事には、(株)吾野原木センターの鴨下文明さんと、大河原木材(株)の大河原伸介さんが就任した。また、オブザーバーは、市の事務局推薦で県川越農林振興センター担当部長の阿曽隆久さんに決まった。幹事(10名以内)及び、FM部会長、CoC部会長は、会長指名で後日発表される事になった。

 会の冒頭挨拶に立った井上会長は、「認証を取ったからと言って、西川材が高く評価され高く売れるという保証はないが、売りやすくなる、という事は確か。西川材を世界基準の土俵に上げて、勝負していく。認証取得自体が目的ではなく、取得した後、どのように認証を活かして、西川材を売っていくかが目的」と、会の趣旨などを説明。

 山林を所有する市の代表として、FM認証部会員に名を連ねる大久保市長は、「下流域に上流域の大切さが十分に伝わっていない。飯能市の材木関係の人が潤沢になっていくことが、素晴らしい飯能に繋がっていくと思っている。市が一念発起しないと、西川材の素晴らしさは、全国に伝わっていかないと思う。買っていく努力を我々市と行っていきましょう」と挨拶。

 井上会長は、「山から加工流通まで、まとめて認証という事は比較的少ない。森林認証された西川材は、産地崩落や、切りっ放しの荒れた森林からではなく、きちっと管理された所から出て来た安心して使ってもらえる木材という事を知ってもらえれば消費者にPRになる」と、西川材の需要拡大に期待する。