新会館設計業者候補を選出 「分棟型で街並み形成に優れる」

最優秀者が提案した新会館イメージ

 飯能商工会議所(矢島巌会頭)が平成32年3月の完成を目指し、商工会館を現在地で建て替えることに伴い実施した「会館建設設計監理業務公募型プロポーザル」で、業者からの提案内容について審査した建築関係の専門家による審査委員会(三井所清典委員長)は、設計管理候補者となる最優秀者に「(有)野沢正光建築工房」(東京都世田谷区)を選出した。会議所は今後、新会館の設計など業務委託契約を同工房と結ぶ。

 大通りに面した現在の商工会館は、延床面積約700平方メートルの鉄筋コンクリート造3階建て。昭和39年の建築から今年で54年が経過し、老朽化が進み、平成25年に実施した耐震診断でも、耐震性や耐久性等に問題があると指摘されていた。

 会館の建て替えを最重要課題として位置付けた会議所は内部に特別委員会を設置するとともに、建設に伴う業者選定を従来のような事業費優先の入札方法ではなく、西川材・観光振興、コミュニティといった新会館建設のコンセプトに合致した企画を業者から提案してもらい、その中から能力が高いと判断した者を審査で選ぶ「公募型プロポーザル」で実施。

 この新施設建設設計監理業務に対しての業者からの参加表明を5月1日の期限で募集し、応募のあった40社(埼玉県内と東京都内)の中から、同月11日の1次審査で5社に絞り込み、その後、6月12日の2次審査(最終審査)で、最優秀者と準優秀者の2社を選び出した。

 最終審査会は、公開により会議所内で行われ、5社が30分の持ち時間で順番に建物の特性、西川材を使って設計を進める体制、活用方法、構造、工法、建設コスト、ランニングコスト、施設に設ける商工業振興、観光振興、西川材振興、交流コミュニティ機能などについてパワーポイントを使いながら発表した。

 審査員は、三井所清典氏(日本建築士会連合会会長、(株)アルセッド建築研究所代表)を委員長に、山辺豊彦氏(日本建築構造技術者協会関東甲信越支部顧問、山辺構造建築設計事務所代表)、安井昇氏(NPO法人木の建築フォラム理事、桜設計集団一級建築士事務所代表)、田島慎司氏(飯能市建設部参事兼建築課課長)、加藤義明氏(飯能商工会議所副会頭、飯能商工会議所会館建設特別委員会委員長)の計5人。

 審査委員会が選出した新会館建設業務の受注候補者となる最優秀者は、(有)野沢正光建築工房、準優秀者(次席)は(株)SALHAUS(東京都千代田区)。選定された2社の発表は、22日午前中に会議所ホームページ上で行われた。

 野沢正光建築工房が提案したのは、「西川材の魅力を発信するまちに開かれた商工会議所」をコンセプトに、多様かつ複合的な活動を支えるべく、主要な部屋の全てを1階に配置し、建物内外に誰もが多様に利用することが出来る4つの庭(ニワ)、「マエニワ(ホール)」「ソトニワ(中庭と駐車場)」「ウチニワ(多目的室)」「ウエニワ(屋上)」を計画したもの。

 西川材のスギ・ヒノキ製材とCLT(強度が高い新しい集成材の一つ)パネルを組み合わせ、新旧の木質構造技術を融合した先進的な構造計画とした木造で、マエニワとウチニワの外壁については、ヒノキ小径木を組み合わせ、光や風を通す欄間のような壁にして、ソトニワとの連続性を持たせた。

 今後、会議所は会館建設工事(事務所棟、外構、駐車場整備工事等)の基本設計・実施設計、工事監理一式の業務を同工房と結ぶが、契約を辞退した場合は、第2位の(株)SALHAUSに交渉権が与えられる。新会館建設工事委託契約の履行期間は今年7月1日から平成32年3月31日。

 ▽三井所委員長の講評

 「最優秀者の提案の特徴は、屋上利用の平屋と2階建ての分棟型のイメージで、街並み形成に優れ、木造・西川材の表現に最も富んでいた。平屋を大通りに近づけて街並みの連続性を保ちながら、2階建てをセットバックさせて親しみのある前広場を設け、施設の短時間利用者の駐車場に充てる考えである。催事には、駐車場の広場活用と屋内1階の多目的室や廊下、中庭等の活用で賑わいの演出が上手くできそうである。

 1階屋上の利用は、広場や1階での催しを眺められるという立体的空間利用に優れた提案と評価できる。必要諸室を含めた総床面積が最も少ない反面、使いやすさを感じさせるものである。市街地の商工業振興他、観光、市民交流の拠点性に優れ、西川材振興の拠点には最も優れていると評価された。但し、防火性と外周木部の耐火について、一層の配慮が望まれる」。