バス内に突入する「爆発物処理班」

バス内に突入する「爆発物処理班」

 五輪会場に向かうバス内に爆発物が仕掛けられという想定によるテロ対策訓練がこのほど、飯能市柳町の国際興業バス飯能営業所を会場に実施された。飯能警察署、同バス飯能営業所、飯能日高消防署、飯能市、日高市のほか、テロを許さない街づくりを目指して、官民一体となった活動を推進している「うぐせみネットワーク」も参加。実践的訓練を通じて、テロの未然防止に最も有効な市民も参加した関係諸機関の連携体制の重要性が確認された。

 近年、世界中で一般市民を狙ったテロが頻発。手口も悪質・巧妙化している。2020年に開催される「東京オリンピック・パラリンピック」でもテロの懸念が高まっている。

 県内では、バスケットボール(さいたま市)、サッカー(同)など4競技が実施される。その内、ゴルフは、霞ヶ関カンツリー倶楽部を会場に開かれるが、敷地の大部分は川越及び狭山市だが、西側の一部、サイボクハムがある日高市下大谷沢の付近は、飯能署の管轄になる。

 昨年秋、米国のトランプ大統領が、同倶楽部でプレーした際には、多くの同署員が警備にあたった。オリンピック開催時は、同署管内の鉄道駅から多くの臨時バスの運行も予想される。

 現在、混乱の誘引やテロ集団の存在誇示を目的に、大きなイベントの観客や、観客を運ぶ公共交通を狙ったテロが多発していることから、同署を中心にした訓練が企画された。

 テロの未然防止には、不審な動きを察知できる一般市民の目と協力、関連諸機関の密接な連携が不可欠。今回は、実践的訓練に関係諸機関の職員にも参加してもらい、テロへの警戒感を培い、実際にテロが発生した際の連絡方法や手順を理解することが目的。

 訓練は、五輪各競技場に向かう交通輸送機関を狙った爆破テロ事案が連続発生している、という想定を前提に小雨降る中スタート。

 「会場に向かう国際興業の臨時バス内に、爆発物を仕掛けたという通報があった」というシナリオを端緒に始まったが、「まもなく訓練を開始します。訓練参加者は、訓練準備をお願いします」というアナウンスとともに、バスに乗り込んでいた10人の“乗客”役の市職員をはじめ、会場内に緊張感が張り詰めた。

 警察からの通報を受けた同バス飯能営業所は、すぐに当該バスの運転手に連絡。内容を正確に伝え、「車両を安全に停車させて乗客を安全に避難させた後に、社内に不審物件がないかどうか確認し、発見したら、すぐに110番通報」するように指示した。

 住宅街で緊急停車し車内で爆発物らしき物を発見した運転手は、すぐに通報するとともに、車外に避難した乗客に、安全確保のために、バスから、より遠くに離れて避難するように誘導した。

 この際、同署は、「避難する際には、バスから十分な距離を取り、遮蔽物の影に隠れる必要がある」と、注意点をアナウンスした。

 爆発物の形状、バスの現在地点などについてのやり取り、市への協力要請、警察と行政の連絡調整訓練などが続いたが、この間、同署は「爆発物のようなものを発見した場合、動かす事は厳禁」と、強調した。

 また、署は、「不審物がいつ爆発するか不明。爆発物の大きさから、概ね半径50メートルの世帯が避難対象。対象世帯数を調査し、処理に時間が掛かる可能性があるので、避難所の開設が可能か、検討を」と、市に周辺住民の避難について協力要請した。

 警察車両が到着。爆破物処理班に扮した警察官2名が、安全防護服(実際よりは軽装備)に身を固め、バス内に突入。紙袋に入った乾電池、リード線付きの爆発物を発見。署に速やかに報告した。

 バス外では、消防署員が不測の事態に備え現場待機。警察官は、乗客や付近住民の安全確保に当たるとともに、不審物を置き去りにした男の目撃情報を乗客から収集した。

 その結果、目撃情報に酷似した不審な男が、他の乗客から一人離れ近くの建物内にいる所を発見。同行を求め事情を聞こうとしたところ、大声を張り上げ刃物で抵抗した事から、周りを取り囲んだ警察官4人で素早く取り押さえた。男の制圧で訓練は終了した。

 訓練終了後、湯本賢飯能署長は、「5年前のボストンマラソンでも、2つの爆弾が爆発し3人がなくなっています。2020年に向け、うぐせみネットワークを中心に各事業者、皆様と緊密に連携し、市民・観客・乗客の安全を守ることに努めていく」と講評。

 酒井栄二飯能日高消防署長は、想定外という事がないよう、想定訓練を積んで想定内にして行く必要がある。本日の訓練は、実際起こったときの対処に役立つ。連携を密にした最高の訓練になった等と述べた。

 さらに、場所とバスを提供し訓練に参加した同バスの藤澤宏飯能営業所長は、「バスジャックが他の営業所管内で発生した事があり、毎年全社的に訓練しています。飯能では6月20日にも、刃物を持ったバスジャックの想定で訓練を実施します。実際ゴルフ場には貸し切りバスを運行する事があるので、乗員への教育、連絡体制を構築していきたい」と、コメントした。