ピンクや青色の大輪 飯能夏まつりで今年も朝顔市

佐野さん(右)が栽培中の苗の様子をみる小澤さん(中)、代表の本橋さん(左)

 飯能市中藤地区の愛好家が集まる「中藤朝顔市実行委員会」(代表・本橋憲一郎さん)の役員は今、7月の飯能夏まつり会場で販売するアサガオの栽培に忙しい。そのうちの一人、佐野敏雄さん(67)は、約250本の苗を自宅近く、中藤川沿いの畑で育てている。4月15日に種を蒔き、苗は現在7センチほどに背を伸ばした。生育が順調なら、今月18日には行燈づくりに仕立てる販売用の鉢に植え替える。移植された苗の生育はその後、19人いる会員たちに分配され、それぞれが飯能夏まつりに向けて、大輪が咲くよう丹精込めて育てる。

 中藤朝顔市実行委員会は、7月に開かれる飯能夏まつりの2日間、大通りに面した小町公園(飯能商工会議所前)で、行燈仕立てのアサガオを販売するため、平成26年に地区住民で結成された。

 会の代表を務める本橋さん(68)がその年の夏に、同じ地区に住む小澤章一さん(77)宅を別件で訪問した際、見事なまでに庭で咲き誇っているアサガオを見たのが会立ち上げの端緒。「それはもう、立派なアサガオが綺麗に咲いていた。ここだけに置いておくのはもったいないと思った」と、本橋さんは当時を振り返る。

 父親の影響で独身の頃からアサガオ作りに手を染めていたという小澤さんが、この時栽培していたのはピンク、青色の花のアサガオ20鉢ほど。今のような行燈づくりではなく、蔓を出さずに鉢の中心で開花させる一本立ちだったという。

 本橋さんは、このアサガオの栽培を地域づくりの一環として中藤地区の人たちにお願いし、朝顔市を開くことができないだろうかと発案。それにはアサガオのことをもっと知ろうと、東京入谷の朝顔市に出荷するアサガオの栽培を研究している都農林総合研究所に小澤さんと出向いて、専門研究員から栽培方法を習得。そこでの技術を地元に持ち帰り、中藤地区の人たちに趣旨を呼び掛け、協力を申し出た20人で会を立ち上げた。

 中藤朝顔市実行委員会による飯能夏まつり会場での朝顔市は、会結成の翌27年からスタート。初年度に200鉢を売り、以降の市でも順調に売り上げ、リピーターが付くほどまでの人気に。

実行委員会が飯能夏まつり用に用意するアサガオは、一つの鉢に色違いの花が咲くよう2本のアサガオが植えられ、「大輪咲き」なのが特長。

 入谷の朝顔市は4本仕立てだが、花は小さい。これに対し、中藤朝顔市実行委員会が栽培するアサガオは、直径15センチくらいの大きな花が蔓を伸ばしながら行燈仕立てで次々に開花するという。「うちのアサガオの花は、入谷の朝顔市の倍はあります。大輪咲きの行燈仕立ては珍しい」と本橋さんは胸を張る。

 18日の植え替え以降、朝顔市当日にちょうど開花するよう調整しながら会員によって生育されるアサガオの種類は、白色の「暁の光」、ピンク色の「暁の錦」、青色の「暁の海」の3種類。暁の錦は今飯能夏まつりで初めて販売する品種。飯能夏まつり会場には250鉢を運び込む予定でおり、苗500本のうちの約半分ずつを役員である佐野さんと小澤さんが受け持ち、育てている。

 佐野さんがアサガオを栽培している場所は、自宅脇を流れる中藤川と山林に挟まれた畑。ここに、温床と呼ばれる1メートル×2メートルの生育箱を作り、温度管理に注意しながら発芽から植え替えまでの間、手をかけている。

 4月いっぱいは生育箱の蓋の上に布団をかけて保温し、今の時期は天気が良いと苗を外に出し、天日と風にあてることを連日繰り返している。

 苗の時に最も注意を払わなければいけないのが、寒さと雹。だから、植え替えし、会員に渡すまでは温床から出したままで外出するのは、天気が急変することもあるので禁物だ。「これをやっていると、家も空けられない」と笑うアサガオづくり50年の小澤さんは、佐野さんの苗に「今年も良くできている。申し分ない」と太鼓判を押す。

 中藤朝顔市の開催日程は、14日が午後1時から7時、15日が午前10時から午後7時まで。実行委員会のメンバー6人ほどが会場の小町公園に詰め、1鉢1500円で販売する。

 ▽本橋代表の話「メンバー一人ひとりが天塩にかけて育てる中藤地区のアサガオ。今年は4年目ということもあり、技術も飛躍的に向上しました。天候も良かったので、出来栄えの良い物をお届けできると思っています。飯能夏まつり当日は、ぜひとも大勢のお客様にお越しいただきますよう、役員一同心からお待ちしております。朝顔市が飯能夏まつりの風物詩になれば嬉しく思います」。