来年度一貫校に統合 最後の新入生は3人

左から、宏瞳君、日菜子さん、心夢さん

 「よろしくお願いします!」と、希望に胸膨らました3人の新入生は、物おじする事なく元気にあいさつ。飯能市立東吾野小学校(安田孝之校長、同市平戸)で9日、入学式が行われた。同校は平成30年度いっぱいで閉校し、来年度は、西におよそ5キロ離れた小中一貫校(同市長沢、現在は西川小校地)に統合されるため、今年迎えた子どもたちが最後の新入生となる。

 同校は明治5年、虎秀村の福徳寺の一部を仮校舎に充てた「虎秀学校」を起源とし、同17年、移転し「甲東学校」と称した時点を開学としている。昭和31年、東吾野村が飯能市に編入され、現校名の飯能市立東吾野小学校に改名。同55年に現在地に移転。同59年、体育館が新築され、開校100周年記念式典が挙行されている。また、同校では30年以上、ホタルの飼育に取り組み6月ごろ観賞会を開いており、同61年にホタル人工増殖飼育施設が作られている。

 東吾野地域は、かつて林業で栄え、戦前の昭和10年頃には約550人前後の児童が在籍。同50年代にも、150人くらいの子どもが勉強に、スポーツに励んでいた。しかし、21世紀に入り地域の人口減少が顕著になり、平成17年から27年の10年間に地域人口が約20%減少。児童数も減り続け今年度は新入生3人を含めて全校生徒は27人に。

 また西隣の吾野地区も、27年までの10年間で25・2%人口が減った。同地区も児童数の減少が続き、同地区の吾野小(全校生徒32人、内新入生5人)、西川小(同21人、同3人)も複式学級が導入されるなど学校運営が難しくなっていた。

 児童数減少の課題解決のため、自治会、地域福祉団体、保護者会など団体の代表者が集まり、協議が重ねられた結果、市は、31年度に、東吾野・吾野・西川小の3校を統合し、西川小と同小隣接地にある吾野中学校の施設を活用した「施設隣接型小中一貫校」の開校を決定。施設隣接型小中一貫校は、小学校6年間と中学校3年間の義務教育9年間を系統性、持続性を持たせ教育活動を行う学校の事。

 新設の一貫校は「魅力ある学校」を掲げ、定住者の増加も視野に入れた地域振興に寄与する新しい学校創りを目指す。

さらに、吾野保育所も新設校に隣接していることから、子どもたちを一体的に育てていく仕組みを構築し、飯能市の優れた教育環境のモデル校が目標。

 東吾野小最後の新入生に迎えられたのは、牧野宏瞳(あつと)君、大野日菜子さん、町田心夢さん。三人とも平戸地区在住。

 在校生のお兄さん、お姉さんに手を引かれ拍手に迎えられて、在校生が作った花輪で飾られた“門”をくぐり入場。3人とも緊張した面持ちながら落ち着いて式典に臨んだ。

名前を呼ばれると、3人とも「はい」と大きな声で答え、在校生に「よろしくお願いします」と、しっかりした口調であいさつ。

 安田校長は、「本校134年目を迎え最後の入学式となりました。これからも全校児童27人を地域皆で見守って頂きたい」などと、来賓や出席者に、子どもたちの教育への協力を呼び掛けた。

 式後、楽しみにしている教科などを聞かれ、3人は、「(式は)楽しかった。勉強したい。さんすう」(宏瞳君)、「縄跳び」(日菜子さん)、「音楽が好き。トトロの」(心夢さん)と、それぞれはにかみながら答えた。

 保護者代表としてあいさつした小学校教師の牧野孝宏さん(32)は、「子どもの6年間の成長が楽しみ。学校が1年でなくなるのは寂しいが、来年新たな多くの仲間と出会える事も楽しみ」と語った。牧野さんは、8年前、周辺の環境が気に入り引っ越しきたという。

 新入生3人を新たに迎えた同校は、教職員15人の体制で、最後の1年の子どもたちの教育に当たる。

 平成23年から複式学級が導入され、26年に全学年完全複式となり、新入生は、新2年生と一緒の教室で学ぶ。

 安田校長は、「東吾野小がなくなる事を卒業生の皆さんにも知ってほしい」と語り、この1年様々な企画を検討しており、子どもたちにいい思い出になるようにしたい、と抱負を述べた。

 来年度、統合される3校は、既に修学旅行や、3・4年生の社会科見学などを合同で実施しているが、スムーズな統合を実施し、子どもたちが新たな環境に馴染んで行けるように、3校では、実施可能な合同の取り組みを検討している。

 現在、学区から最も遠い西武池袋線武蔵横手駅周辺に住む子どもは、往復約7キロを歩いて通っているが、3校統合後は、東吾野小の児童全員がバスで新設される一貫校に通学する予定。