安倍昭恵氏が来飯 野口種苗でタネ選び

ニンジンを試食する昭恵さんと野口さん

 安倍晋三首相の妻、昭恵夫人が6日、旧知の野口勲さん(73)の野口種苗研究所(飯能市小瀬戸)を訪ね、野口さんから固定種野菜の知識を吸収するとともに、固定種野菜のタネ20袋近くを購入、笑顔で帰宅の途に就いた。昭恵さんは、故郷の山口県下関市の「昭恵農場」で無農薬の「昭恵米」を育て収穫し、自らが経営する居酒屋「UZU」(東京・内神田)では、昭恵米に限らず、「無農薬、低農薬、無添加、路地もの」にこだわった逸品料理を提供するほど、自然農法や食の安全について造詣が深い。昨年9月、天皇皇后両陛下が飯能日高に行幸啓された際、野口種苗のタネから収穫された飯能産の固定種野菜6種を召し上がられており、固定種野菜の認知度が今後一層高まるものと期待される。

 昭恵さんは、月刊雑誌「致知」の平成26年7月号中の記事、「生命の花を咲かせ続ける~タネが危ない~」というテーマで野口さんと対談している。その際、固定種のタネに着目し、固定種の保全普及活動に取り組むパイオニアとして全国に名の知られた野口さんの野口種苗を、いずれ昭恵さんが訪問するという話があり、今回それが実現した。

6日午後、昭恵さんは、料理研究家で、UZUの切り盛りを任せている武士雅子さんらを伴い4人で来飯。

 固定種野菜について知識を深めたい、という事や、武士さんらがUZUで固定種野菜を提供したいが、栽培農家を教えてほしい、という事が目的だったらしい、と野口さんは振り返る。

 自分が食べたい物を店で扱いたい、という思いを感じた、という。

 野口さんに積極的に質問し会話したのは、もっぱら武士さんで、昭恵さんは、あまり多くは語らなかったという。

 しかし、野口さんの固定種のニンジンを栽培した日高の農家が、「固定種のニンジンは、野ネズミに食べられてばかりで困った。一緒に植えたF1のニンジンは食べられなかった」と言うエピソードを紹介し、「あなた方が普段食べているニンジンは野ネズミも食べない」と話すと、目を丸くして驚くなど、野口さんの話に熱心に耳を傾けていたという。

F1は、早く収穫するためや、形を揃えるためなどに人工的に交配させたタネで、1代限りになるためタネが実を結ばない。

 また、昭恵さんから自宅3階ベランダのプランターで野菜を栽培している事を聞き、野口さんは育て方が解説されている本を紹介した、という。

 野口さんとの懇談は、1時間半以上に及び、その後、野口さんの説明を聞きながら、昭恵さんと、武士さんは同店舗内で熱心に固定種野菜のタネ選びをした。

 甘い柿のような味のする「黒田五寸人参」を試食したり、「お野菜のタネは何年くらい持つものなのですか」と質問したり、昭恵さんは終始笑顔でタネ選びに没頭。上品な甘さが特徴の「甘露まくわ瓜」や「銀泉まくわ瓜」、ネットリした日本産の「日向14号南瓜」や「備前黒皮南瓜」、そのほか京水菜、小松菜、カブなどタネ20袋近くを買い上げた。

 結局、昭恵さんらは同所におよそ2時間滞在。同行者に先を急がされ、昭恵さんは、「ありがとうございました。長時間お邪魔いたしました」と、野口さんに感謝しながら名残り惜しそうに同店を後にした。

 昭恵さん自身は、自家栽培用に野口さんの店で扱うタネを購入することも、大きな目的だったようだ。

 UZUは、日本で一番客層の広い飲み屋。いろいろな立場の様々な人が集う店、と武士さんらは話していたという。