サクラ咲く山里で芸術鑑賞 名栗湖国際野外美術展

 平成2年、名栗村(当時)の村制100周年記念事業として名栗湖畔を主会場に始まり、一時中断を挟んで現在まで継続されている造形アートの野外展覧会「名栗湖国際野外美術展」が衣替えし、今年からそれまでの秋から春開催に変更されることとなった。関係者は「名栗の山里にサクラが咲く、4月から5月の暖かな陽気の中で作品を鑑賞してほしい」と話している。

 名栗湖国際野外美術展の開催は、認定NPO法人名栗カヌー工房の理事長を務め、現代美術の作家としての顔も持つ山田直行さん(68)と、当時の名栗村で文化活動や地域のまとめ役的存在だった男性(故人)との出会いがきっかけ。

 村制100周年記念事業の実施については、1世紀続いた村の歴史を振り返り、次の新たなステップに踏み出す山村を皆で祝おうと、村と住民を交えての実行委員会が組織。花火大会など冠の付いた大小の事業が繰り広げられた。

 中で、名栗湖国際野外美術展は、芸術家としての山田さんとそのコネクションを生かし、また名栗カヌー工房の立地などで来訪者が増えた名栗湖の認知度をさらに高めるなどの狙いで発案。実行委員長に前出の男性が着任し、山田さんら作家と村民の協力を仰ぎながら、その年の秋に開幕した。

 湖畔や周囲の山林、さらには湖に注ぎ込む渓流までも芸術作品の展示場所にした県内でも珍しい、野外美術展として広く知られるようになり、予算の関係などで中断した年はあったものの、一昨年までに計13回開かれている。

 特に、一昨年の同展については、名栗地区が物価上昇で生活苦に喘いだ農民たちが「世直し」を合言葉に蜂起した慶応2年6月の「武州一揆」発生の地であり、その農民一揆から150周年となることから、「名栗武州一揆150周年記念」として開かれ、郷土史家などからも関心を集めた。

 開催時期をそれまでの秋から春に変更した理由は、来場者を対象にしたアンケート調査から「秋は寒い」との声が多数寄せられたため。関係者での話し合いの結果、平成29年は同展の開催を見送り、30年の春から新装野外展として再スタートを切ることで意見の一致を見た。

 計画では、第14回目となる次期野外展の開催期間は今年4月中旬から5月27日前後までとし、すでに韓国やフランスの海外作家には作品の出品依頼を済ませているという。

 展示会場については、名栗湖畔の周回道路沿いや、同湖下手から名栗地区行政センターに近いキャンプ場「ケニーズファミリービレッジ」に続く約1キロメートルの市道沿いの空き地など、従前と同じ。ただ、さわらびの湯に隣接する民間の土地に新たに開設された英国製大型テントが常設されている滞在型キャンプ場にも作品展示が可能かどうか、関係者間で話し合われている。

 会期中は、カヌー工房内か、または新たな作品展示場に加えられるか、検討が進むキャンプ場のどちらかで、音楽コンサートを開くことも構想している。

 山田さんは、「野外美術展の立ち上げやその後の運営に限りなく尽力して頂いた初代実行委員長や、毎回立体作品を出品してくれた馴染みの外国人作家も、この間に亡くなられた。野外展を秋開催から春に変更するが、彼らにも喜んでもらえるような野外展にしたい」と話している。

 名栗湖国際野外美術展の問い合わせは、名栗カヌー工房(979・1117)へ。