メッツァ2億円支出可決② 賛成11人・反対7人、市長発言に一時騒然

 ■議会の議論の経緯

 11月29日に開かれた本会議で、メッツァ事業への質疑が集中。7人の市議が市の見解を質した。さらに、この事業への支出を含む補正を付託された翌日の総務委員会(大津力委員長)でも、活発な質疑が行われ、反対賛成の討論後の多数決による採決で原案通り採択されたが、賛成4人、反対2人だった。

 8日の本会議の大津議員の委員長報告でも、メッツァ事業について多くの時間が費やされ、野口和彦議員(NEXTはんのう)は、同委員会でのメッツァ事業への反対討論の詳細を大津委員長に質した。

 大津委員長は、反対討論の概要を説明。

 滝沢修議員(共産)の反対討論は、「メッツァ事業負担金と、地域SPCへの出資金について協議を重ねてきたが不安がある。リスクが100%ないとは言いきれない」などの理由であったこと、また、坂井悦子議員(日本維新の会)の反対討論は、「デメリットやリスクこそしっかり検討する必要があり、ハウステンボスやムーミンショップの撤退など、テーマパークや商業施設が閉鎖しているという現実が飯能でも起こり得る」という内容だったことを大津委員長は答弁した。

 また、中元太議員(公明)の賛成討論も併せて紹介。

 「メッツァは消滅可能性都市から起死回生のチャンス。今回の補正はその第一歩、飯能市などで働く人へも良い効果をもたらす。賛成は、市民から付託を受けた議員として当然」という趣旨だったことを報告した。

 各委員長報告の後、各議案について、質疑、討論が行われ、改めて、滝沢議員は、メッツァ関連を含む補正に問題点を指摘し反対討論を行った。

 ■「公金を一企業に支出」

 「1億5000万円の負担金の問題。ビレッジは、物販や飲食を目的とし、そこから利益を上げる。事業者がトイレ等を整備することは当然。地域SPCへの出資は、市の公金で私募の証券を購入、運用、投資する。テーマパークへの投資はうまくいかないリスクもある。投資の元本割れ等のリスクがある。倒産隔離されていても、市長の答弁通り100%リスクがないわけではない。フィ社との協議内容が明らかでない。ムーミン基金は、市内のインフラ整備など観光連携施策に支出されるべき、メッツァ等への負担金等はあくまでも1企業への支出」と、滝沢議員はメッツァへの支出反対を表明した。

 ■「小異捨て大同団結を」

 これに対して、加涌弘貴議員(無所属)が、賛成の立場から討論。

 「事業への支出2億円は、ふるさと納税による使途を指定された寄付金を積み立てたムーミン基金。事業への支出は、ムーミンのテーマパーク開園を楽しみにしている全国の寄付者の趣旨に適う。第5次総合振興計画に基づき、国に財政支援を得て、都市回廊空間の整備を進めており、メッツァはその中核。事業には、地元金融機関をはじめ、多くの地元企業の参加が決定し、地元経済への影響が大。市の参加で事業の信用力が増す。リスクが伴う事は理解するが、市が参加しない場合、リスクはより増す。開園を楽しみにしている市民、寄付された全国の善意の人達のために、小異を捨て大同団結して成功に導くべき」と、議案に賛成する意義を語った。

 メッツァ事業への2億円の支出を含む補正(第82号議案)は、起立による多数決(野田議長は裁決に加わらず、出席議員18人による)での採決になった。

 その結果、賛成11人(関田直子議員=NEXTはんのう、大津力議員=同、野口和彦議員=同、内田健次議員=無所属、平沼弘議員=みどりの会、栗原義幸議員=公明、中元太議員=同、松橋律子議員=同、加藤由貴夫議員=みどりの会、砂長恒夫議員=同、加涌弘貴議員=無所属)、反対7人(新井重治議員=清風会、坂井悦子議員=日本維新の会、滝沢修議員=共産、山田利子議員=同、新井巧議員=同、金子敏江議員=同、鳥居誠明議員=清風会)で、原案通り可決した。※議席番号順。

 ■「反対理由は小さな事」

 今定例会の議事終了後、あいさつに立った大久保市長は、「この補正は、私の市長としての思い、市民の思い、日本中のムーミンファンの思いの中身の濃いもの。市長として2期目の重要な責任を負っているが、その中でも、早期に素晴らしいメッツァの誕生を望んでいる方々の大きな支援だと理解している。補正の2億円は、素晴らしいメッツァ実現のためにはどうしても必要。市が率先してメッツァ大成功に導くためには、やむ得ない出資。7名の方の反対があったが、残念な思いでいっぱい。たぶん大勢の市民は、飯能市以外は、一致団結してムーミン、メッツァの誕生を、後押ししてくれるような議員さんたちだと思っていると思う。7名以外の議員さんの御支援を頂き、しっかりと、メッツァ事業の推進にまい進したい。市民の負託に応えるのが私の政治姿勢。メッツァ事業を堂々と法に抵触なく、それが私たちの使命。それがちょっとした事の、小さい事を反対の理由にするような事は、(怒号で聞こえず)思っている。大きな観点からメッツァ事業を応援されることを」等と発言。

 この市長発言をめぐって、議場から何度か怒号が起こり、今年の市議会最終日は、荒れた締めくくりとなった。

 また、この日の議会への市民の関心は高く傍聴者は一時約90人に達した。議場に入りきれず、約半数は別室での傍聴となった。

 そのほか、今議会では、新たな人権擁護委員に大川戸恒治さん(同市白子)が決まり、県都市競艇組合議会議員に加藤議員が選出された。