日高の小中一貫教育 一体・隣接・分離の3パターン

 日高市の平成29年度総合教育会議が市役所で開かれ、谷ケ﨑照雄市長と中村一夫教育長ら教育委員が「日高市立小中学校における小中一貫教育」について意見を交わした。将来の導入を見据えた市内の小中一貫教育の運営体制については、小学校と中学校どちらかの施設を利用し統合する「施設一体型」、近接する小中学校の施設を併用する「施設隣接型」、離れた小学校と中学校の施設をそれぞれ利用し連携して教育活動を行う「施設分離型」の3つのパターンが挙げられ、会議では形態別のメリットや課題に基づいて意見を交換。21日の日高市議会(森崎成喜議長)全員協議会で会議内容が報告された。

 日高市は高麗・高麗川・高根・高萩・高萩北・武蔵台の6地区に小・中学校と公民館が1つずつ設置され、1つの小学校から1つの中学校へ進学するのが特徴。

 児童生徒数が少ない小中学校では、1学級のまま9年間を過ごすことになり、1人ひとりに対してきめ細かい指導ができるなどのメリットがある反面、活気や競い合う雰囲気が弱い傾向にある、大人数や異学年での学びや遊びの経験が少ない。また、子どもたちの精神面の発達が早まり現在の6・3制になじまず、「中1ギャップ」などの課題が生じているという。

 そこで、「小中一貫教育により、子どもの成長を9年間の義務教育期間で連続して考え、小中学校や様々な地域の団体などの連携をさらに高め、学校・家庭・地域社会が一体となって子どもたちの教育に携わることが可能な教育環境づくりを進める」として、小中一貫で1年生から9年生までの教育課程を組み、小学校高学年から教科担任制を取り入れる小中一貫教育の構想を打ち出した。

 学校施設の運営体制については、高麗地区、武蔵台地区を想定し小中どちらかの施設を利用し統合する「施設一体型」、高萩地区を想定し近接する小中学校の施設を併用する「施設隣接型」、高麗川地区、高根地区、高萩北地区を想定し離れた施設で連携して教育活動を行う「施設分離型」の3パターンを示している。

 今回の総合教育会議では、3つのパターンについて、児童生徒、教科指導、学校行事、部活動、施設、跡地利用といった視点からメリットや課題を整理し、その資料を基に意見を交換した。

 施設一体型と施設隣接型については、同じようなメリットがあるとして、児童生徒の視点では「専門の教員がいることにより、小学生のうちから興味関心のある教科等の学習をより深く学ぶことができ、学力向上につながる」「関わる教員の数が増え悩み事を相談しやすくなる」。

 教科指導の面では「小学校の英語を中学校教諭が指導できる」「技能教科は中学校教諭の持ち時数に余裕があるため小学校で指導できる」。学校行事については「音楽祭、体育祭を小中合同で行うことで児童生徒の興味関心を高めることができる。練習を一緒に行うことで一貫した指導も可能になる」。部活動については「小学生が早くから部活動に親しむことができ、きめ細かい指導が行える」。

 また、施設や跡地の利用として、施設一体型では、施設の改修歴や利便性を踏まえてどちらの施設を活用するかを検討し、空いた建物や校庭の跡地は公共的な活用を図ることができるとした。

 課題としては「児童から生徒への成長段階が実感しにくい」「最上級生になる機会が2回から1回に減る(施設一体型)」「トイレや水道について一部改修が必要(施設一体型)」などが挙げられた。

 施設分離型については、「小中一貫となった変化が実感しにくい」との課題があるが、教員が相互に訪問して授業を担当することにより、専門性を生かした指導や小学校段階でのつまずきの解消などに取り組みやすくなるほか、学校行事や部活動への参加など交流の機会を設けることができるとした。

 総合教育会議では、委員から「日高市の小中一貫教育のオリジナリティーを広くアピールするチャンス」「幼稚園・保育所との連携を視野に入れた小中一貫教育を進めていく必要がある」「施設一体型、施設隣接型では、他の公共施設との関係も考慮して進めていく必要がある」「施設隣接型は、条件面等からは進めやすいかもしれない」「施設分離型は、小中一貫教育の良さが見えづらいので、十分な検証が必要」といった意見が上がった。

 今後の進め方については、「公平性を考慮すると、6地区で同時に始めるのが望ましい。しかし、さまざまな課題もあるため、カリキュラム作成等、可能な範囲で進めていくべき」「地域や保護者への説明を丁寧に行い、理解を得ていくべき」などの意見があった。

 小中一貫教育の具体的な導入時期は示しておらず、市議会全員協議会では、議員から「導入の見通しが分かるようなスケジュールを示して欲しい」とする反面、「時期を決めず、意見を聞きながら慎重に進めるべき」との意見があり、市担当者は「まずは全ての地区を施設分離型と考え、例えば中学校の教諭が小学校へ行ったり、合同で授業をやるといったことは始められる。その後、児童生徒数の推移を見ながら一部の学年を移動したり、一つの学校へ持っていくなどの移行を図ることもできる。まずは小中一貫教育のメリットを研究し、皆様にご理解頂けたら」とした。