赤沢地区に現れた群れの中の1頭。人が近付いても、柿を食べるのを止めようとしない

赤沢地区に現れた群れの中の1頭。人が近付いても、柿を食べるのを止めようとしない

 どこからともなく、集団で現れ、庭の柿の実や畑のクリなどを手当たり次第に貪り食う──。飯能市の山間部ではサルによる作物被害が止まず、増加する一方だ。近年、群れは人の生活圏へと侵入、行動域を拡げている。

 鳥獣被害対策を推し進める市農林課によると、市内で行動するサルの群れは分かっているだけで、「吾野群」と「名栗群」の2グループ。ともに、20~30頭で構成された集団だ。

 東吾野地区のある民家では、干し柿を軒下に吊るしたその晩に、すべて台無しにされたほか、ユズや楽しみにしていた収穫間近のカボチャも食害された。被害は一度や二度ではない。この家の60代後半の男性は、「前の日の夕方に畑を見回った時、異常はありませんでした。ところが、翌日の朝に畑へ行ったら、収穫間近のカボチャがやられていた。もう全滅状態。ほんとに悔しい」と憤る。吾野群の仕業と想定される。

 20日午後、赤沢地区の県道沿いに名栗群と思われる10頭以上のサルの一団が現れ、たわわに実った住宅脇の柿の木を食い荒らした。

 その現場に、タイミング良く市から作業委託を受けているサルの追い払いや捕獲に従事する作業員が2人、軽トラックで通りかかった。

 ところが、車を降りた男性作業員の姿を見つけると、サルは食べるのを止め、一目散に林内へと逃走、あっという間に姿を消してしまった。

 作業員は言う。「サルは利口です。我々の顔を覚えていて、顔を見るとすぐに逃げるんです」。

 サルの捕獲は、イノシシやシカなどに比べて難易度が高い。今年度に入って、罠で捕獲したサルは2頭(市農林課調べ)。市のサル捕獲頭数は、平成26年度9頭、27年度4頭、28年度5頭と年々減少している。28年度を例に見ると、イノシシ捕獲数105頭、シカ捕獲数158頭と比べて、格段に少ない。

 このことについて、同課は「対策を捕獲から追い払いに特化したわけではありません。サルは警戒心が強く、1頭でも罠で捕まると、その場を避けてしまうのです」と説明する。

 集団行動が基本のサルには、群れの先頭に数匹の先発隊がいて、向かう先が安全かどうかを確認する。先発隊が罠に掛かると、サルはその場所を用心して、回避するようになり、再度、罠を仕掛けても掛からないという。

 ただ、イノシシやシカと違って、サル対策での捕獲一点張りは危険だ。

 「捕獲でサルの個体数を減らし、群れを小さくすると飯能以外から違うサルが入り込んできます。現在、市内にはサルの群れとして『吾野群』と『名栗群』の二つがありますが、数が減ることによって余所からサルが侵入してくると、今のバランスが崩れ、3群になってしまう恐れもあります」と、同課は指摘する。

 赤沢地区では、罠は仕掛けず、パチンコなどを使ってあくまでも追い払い作業だけを行った。

 市農林課は、サルの撃退用に、パチンコ(弾50発付き。それ以上は自己負担)を22年度から市民に貸し出している。農林課窓口と地区行政センターに合計170個用意しているが、希望が多いため、借りようとする場合は「事前に連絡を」と、同課は呼び掛ける。

 頭数バランスに気を使いながらの捕獲と、地道な追い払い。市の苦悩は続く