奨学金約35%滞納 市教委の評価報告書

 飯能市教育委員会は、市議会9月定例会に、平成28年度事業の事務に関する点検評価報告書を報告した。これによると、37事業中36事業について、概ね目標達成(90%以上)と評価されているが、就学援助の推進「就学金貸付事業」だけは、目標期待値を下回るとして、「C評価」になっている。

 同報告書は、同市教委が、教育行政の重点施策として力を入れて取り組んだ事業の事務の管理及び執行について、教委自らが点検・評価を実施し、その結果をまとめた物。議会に報告し市民に広く知ってもらい、以後の教育行政の効果的な推進に資する事が目的。

 28年度の飯能市教育行政の重点施策の基本理念は、「共に学び 未来を拓く 人づくり」。基本方針は、「生きる力を育成する学校教育に取り組みます」等、5つを定め、この5方針の下各施策を推進した。

 そのうちの37事業を評価し、100%を超える「S」評価だったのが、図書館が取り組んだ「学校等との連携」事業で、学校等の図書館見学を10団体受け入れた事、学校等への出前講座を6回行った事、ムーミンに関する子ども向け出前講座も4回行った事等が評価ポイントとして列挙され、達成率105%、S評価となった。

 同100%のA評価が28事業、90%以上のBは7事業だったが、教育総務課が取り組んでいる「奨学金貸付事業」は、市が貸し出した奨学金の返還率を、27年度の65・17%から1%上げる事を目標にしたが、0・64ポイントの増加で、65・81%に留まったため、達成率80%とされ、C評価に。28年度末の奨学金返還未納額は、1646万6464円で、内訳が、高校生に対する奨学金の未納額が、約800万円(対象38人)、大学生が約850万円(29人)。

 市の奨学金は、市内在住の経済的条件等を満たした高校生、高専生、短大生、大学生、専修学校生などに、高校生相当で月額2万円以内、大学生相当は月3万円以内を限度として、無利子で貸与する援助措置。

 返済は、貸与期間終了から10年以内に年1回の均等返還で完済してもらう制度だが、およそ3分の1が未返還になっている計算。

 この報告書では、25年度から、この奨学金貸付事業を点検・評価している。改善傾向にはあるが、毎年1600万円前後の未返済が報告されている。

 25年度が、24年度から約172万円未返済額が減り、約1726万円。26年度は、約127万円減の約1598万円、27年度は、約86万円増え、約1684万円、28年度は約37万円減の微減だった。

 市教委は、返還が困難な奨学金貸与者に対して、計画的な返還が出来るように、柔軟な対応を図っているが、子育て世代の6分の1が貧困層と言われる格差社会の現実を浮き彫りにした形。

 市では、奨学金以外にも、様々な就学援助措置を講じている。

 支給要件を満たせば、新入学児童生徒学用品費(小学校入学時4万600円、中学校4万7400円、修学旅行費(小学校2万1490円=限度額、中学校5万7590円=同)、小中学校児童生徒に対して、本人窓口負担分が不要となる「医療券」の交付、学校給食費の年間援助、高等学校へのバス通学費の補助等を実施している。また準要保護世帯の新入学児童生徒学用品費を入学前の3月支給に前倒しするなどの施策も実行している。

 そのほか、報告書には、不登校児童生徒の人数や、いじめの認知件数についても記載されている。

 不登校対策としては、減少を目指し、スーパーバイザーによる研修会の実施や、教育相談の役割や方法についての研修等に取り組んでいる。

 25年度からの不登校児童生徒数を見ると、25年度は、小学校5人、中学校30人、合計35人、26年度が、小学校16人、中学校29人(27年度報告書の数字)、合計45人、27年度では、小学校13人、中学校41人(28年度報告書の数字)、合計54人、28年度は、小学校14人、中学校46人、合計60人と、年々絶対数は、増える傾向を示している。

 さらに、いじめのない学校の実現を目指して、「飯能市いじめ防止基本方針」に基づき、いじめ根絶に向けた取り組みを推進している。

 報告書に具体的な認知件数が掲載されているのは、26年度からで、小学校18件、中学校3件の計21件が認知され100%解決と報告されている。27年度は、3学期末現在で、小学校28件、中学校12件の計40件が認知され、小学校では25件、中学校は8件解消されたと報告され、残り合計7件が継続支援とされている。

また、28年度の報告書は、2学期末現在で、小学校20件、中学校11件、合計31件が認知され、小学校の1件を除き30件が解消されたと記載されている。

 認知時点の時期等に統計上差異が見られ、また、あくまで教師・学校が、いじめと認知した件数のため、増減などの単純な比較は出来ず全容は不明だが、いじめがなかなかなくならない実態が垣間見える報告内容になっている。

 市では、これまでの重点施策の点検評価等を基に、今年度は、新たに、幼稚園・学校づくりの推進で、学習林活用教育の推進、ホッケーのまち飯能を推進するため、埼玉ホッケー協会への大会補助金の交付など、いくつかの新規事業を盛り込みながら、教育行政を推進している。