飯能市本町の定点観測井戸から、測定年度によって数値の増減はあるものの、いずれも環境基準を上回るトリクロロエチレンが長期にわたって検出されていることが分かった。先に開かれた市環境審議会(伊藤雅道会長)で、事務局の環境緑水課が報告した。トリクロロエチレンは、脱脂力が強いことから、金属製品の洗浄溶剤やクリーニング剤として用いられる有機塩素化合物で、発がん性が指摘されている。

 「水質の人の健康の保護に関する環境基準」(環境基本法第16条)で、トリクロロエチレンの基準値は水1リットル中0・01ミリグラム。それが、本町の定点観測井戸(飯能高校南西側)では、平成24年度の市単独による調査開始から28年度までの毎年度、環境基準を上回る濃度で検出され続けている。

 市環境緑水課によると、本町地内の井戸から最初に環境基準を超えるトリクロロエチレンが検出されたのは、平成22年度。

 これは、県による全県対象の地下水継続監視調査として実施されたもので、この時に環境基準の1万1000倍という1リットル中110ミリグラムのトリクロロエチレンが検出され、本町での地下水汚染が発覚した。調査対象の井戸は、県による無作為抽出。

 県は23年度についても本町地内で、前年の継続調査として地下水調査を試み、環境基準の1万1000倍という異常値が出た井戸とは異なる井戸から、1リットル中0・73ミリグラムの環境基準超のトリクロロエチレンを確認している。

 市が市内で地下水調査を開始したのは、県から事務移譲された平成6年度。市単独で、県調査とは別に10か所の井戸を定点観測地点に選定し行っている。

 2223年度の県調査で本町地内の2つの井戸のトリクロロエチレン検出値が高濃度だったため、市は24年度に本町地内から県の調査井戸とは別の井戸を定点測定井戸として新たに選定した。

 市単独調査による対象井戸は合計10か所のため、それまでの地下水調査で環境基準を下回り、比較的数値が安定している他地区の井戸について測定対象から除外した。

 今回の市環境審議会では、10か所(双柳2、川寺5、本町・南町・稲荷町各1か所)の井戸での24年度から28年度までの年1度計5回の地下水汚染調査結果が報告。これにより、22年度の県調査で発覚した本町地内の有機塩素化合物による地下水汚染が、終息傾向にないことが分かった。

 本町の定点観測井戸で、これまでに最も高い値を示したのは25年度。この時は、環境基準の130倍となる1リットル中1・3ミリグラムを検出。今年1月測定ついては、環境基準の約60倍という25年調査に次いで過去2番目の高い値を測定した。

 市はこれまでに実施した現地のヒアリング調査から、問題の井戸と周辺を含む井戸25か所については飲用の対象とはしておらず、所有者はもっぱら洗車や庭木などへの散水用に使用していることを確認。が、所有者には飲用しないよう指導を行うなどしている。

 同課によると、県も含め本町地内での汚染井戸の原因となるトリクロロエチレン使用事業所などは特定できておらず、現在も不明のままという。

 過去に市内では、有機塩素化合物が原因の土壌汚染が発生し、発生源となった事業者が対策として土壌浄化を行うなどした事例がある。