水不足の後に異例の長雨 受難の漁協関係者

長雨で水嵩が増す入間川。後方の橋は飯能大橋(16日矢川橋から撮影)

 8月に入って長雨が続く飯能地方。日照不足による農作物の生育が懸念されているが、漁協関係者も頭の痛い問題に直面している。例年だと、8月はお盆明けの中旬までに500匹近くのおとりアユを販売する。ところが、今年は日本列島を縦断した台風5号以降の雨続きで増水した入間川の水位が下がらないことから、炎天下の夏の風物詩とも言えるアユの友釣りをする釣り人がほとんど訪れず、おとり用のアユの売れ行きがさっぱりだという。関係者は、「お盆休みを当て込んで、アユを仕入れた。ここで稼ぐつもりが‥‥」と、肩を落とす。

 南町の入間川に面した「福島つり堀センター」跡で、友釣り用のおとりアユを1匹600円で販売する平沼啓祐さん(74)は、お盆明けの16日、2冊のノートとにらめっこしていた。

 ノートは、入間川にアユの友釣りにやってきた釣り客が、平沼さんのもとで購入したおとりアユの匹数とその日の天候、河川状況などが記録されたもの。1冊は昨年、もう1冊には友釣りが解禁した今年6月1日からの実績が、鉛筆で手書きされている。

 見比べると、差は歴然。晴れの日が続いて、アユが食べる河床の石に付く苔の状態も良好だった昨年の8月1日からお盆明けの16日までの販売実績は475匹。ところが、今シーズンの同時期となると、売れたのは、わずか133匹と三分の一を下回る。

 「原因は雨続きによる入間川の増水です。40年振りの雨続きだと言われていますが、こんなことは、初めてです」と平沼さん。水量は通常の3倍に膨れている。

 今夏、長雨で入間川が変調をきたしているのは何も8月だけではない。

 友釣りが解禁した6月1日は、上流域の名栗から原市場地区にかけて約250人の釣り人が押し寄せ、大漁の様相を呈した。

 漁協関係者は好調が維持されると期待したが、その後、少雨で水量が激減。そのため、成木川が合流する付近の水温が高い入間川下流域で、「青のろ」と呼ばれる藻が河床の石を覆ってしまうほど大量に繁茂し、友釣りの仕掛けを流れに投入すると、緑色のとろろ状のような藻が纏わりつく始末。これはたまらないと、入間川中下流域から友釣りをする釣り人たちの姿が消えた。

 福島つり堀センター跡の販売所が、解禁から1か月で釣り客に販売したおとりアユは1655匹。が、水位が下降し、青のろが大量発生した7月は前月のおよそ半分850匹に留まった。

 友釣りは、炎天下の河原で釣る、この時期の風物詩。水量が減少し、青のろが大発生した7月、台風と連続雨で増水の8月。今年は、2か月続きで異変が起こり、漁協関係者や釣り人をやきもきさせているのだ。

 平沼さんは言う。「7月は各地のアユの川が解禁しているので、入間川から釣り人が減るのは毎年の常。ですが、今夏は青のろがそれに拍車をかけ、今度は釣り客が殺到するお盆休みが雨にたたられました。お盆休みに合わせて、250匹のおとりアユを仕入れましたが、50匹ほどしか売れていません」。

 熊谷地方気象台の予報(17日現在)によると、この先、飯能地方に太陽が戻るのは来週中頃。

 昨年は、解禁から9月末までの間に約4640匹のおとりアユを売り上げた。今期、その実績に及びそうもないが、平沼さんは「自然が相手だからしょうがないですが、来週からの天気に何とか期待したいです」と、入間川が見える販売所でため息交じりで話した。