販売している野菜を抱える本山さん

販売している野菜を抱える本山さん

 固定種・無農薬有機野菜の直売所「葉菜畑(はなばたけ)」が、飯能市青木にオープンした。同所は、固定種野菜を市内の畑で栽培・販売している「株式会社ひより農園(本山憲誠社長)」の経営。葉菜畑では、同園の朝採り野菜の他、地元の協力農家の提供野菜と、青梅青果市場の直送野菜や果物を販売している。

 本山さんは、東京都出身。専修大学、次世代のリーダー育成を目指している慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント科を卒業。これまで、人材派遣会社、新聞販売店などを経営し、現在も警備会社を運営している。

 平成22年秋、「コメを作っている現場を見に来てくれ」と言われ、行ったところ、そこにテレビ番組の取材があり、思わぬきっかけから、青森県のりんご生産者木村秋則さんと出会う事になった。木村さんは、無農薬・無施肥の自然栽培のリンゴ作りに世界で初めて成功した農家として著名。木村さんが生産するリンゴは、「奇跡のりんご」と呼ばれ、現在、木村さんは株式会社木村興農社社長。

 本山さんは、それまで農業に取り組む気はなく、木村さんの事も知らなかったと言う。

 しかし、会って話をすると、なぜか自然と引き込まれた、と振り返る。千葉県で経営していた新聞販売店の従業員に「農業をやってみたいか」と尋ねたところ、一人が賛同。「では始めてみるか」と、当初は軽いノリで農業を始めたという。

 専業スタッフを石川県羽咋市で行われた「木村秋則自然栽培実践塾」に入塾させ、本山さんも何度も木村さんの元に足を運び、自然栽培の基本を学ぶことから取り掛かった。

 耕作放棄地を貸してくれる農家を探したが、無農薬野菜を始めようとする縁もゆかりもない素人に、農地を任せてくれる人はなかなか見つからなかった。翌23年秋に、千葉県内で山の竹やぶなら貸しても良いという人に出会い、それが本山さんの農業への本格的な取り組みの第一歩になった。

 最初は、竹やぶとの格闘で、農業以前に土木作業による開拓だったという。それでも、スタッフらと奮闘し畑を作り上げ、25年春には収穫した無農薬野菜の産直販売会を行い、経営する居酒屋で提供出来るまでに。

 固定種、無農薬野菜の栽培は、試行錯誤の連続で失敗談も。虫の駆除のために、虫を食べるカマキリの卵を取り寄せ圃場に放ったところ、カマキリは食欲旺盛ながらも、元気な虫は獲らず弱り掛けの虫ばかりを食べ、その一方カマキリを狙って鳥が多く飛来。自然の生態系に反すると失敗すると学んだという。

26年、飯能市役所職員で本山さんの活動を耳にした慶応大学大学院の後輩から、「農地を貸してくれる農家を紹介し、市がバックアップする」という話が舞い込んだ。

 本山さんは、生まれて初めて来飯。後輩の案内で市内を見て回り、「いいところだな」と思い、移転を決意。家族会議の結果、東京自由が丘にあった自宅も引き払い飯能に転居した。

 宮沢湖そばに約8000平方メートルの農地を借り受け再スタート。27年6月には、飯能市に移転後、初の産直を美杉台で実施し瞬く間に完売したという。

 現在は、宮沢湖そば以外に、南高麗の下畑、平松地区と合計2万平方メートルの畑で、年間40品目の野菜を本山さんらスタッフ6人で生産している。

 9割が固定種で無農薬、有機肥料で生産。今年度中には、JASマーク付きの有機認定が取れるはずという。

 同園では、夏は午前4時から畑に出て収穫。採れたて無農薬固定種野菜を、契約家庭に回って直販しているほか、リバランタや、ヘリテイジの天空レストラン銀河鉄道などに卸し、丸広飯能店の青果コーナーで販売している。

 「おいしい」が、見た目は一般の市販品に敵わず、通販では思わぬ苦情を受けることもあるので、採れ立てを直接見て納得して買って欲しい、という思いから直販店を作ることにした、という。

 今回、青木地区に出店したのは、この場所に貯蔵と加工の拠点も併設したため。

 葉菜畑では、ひより農園の無農薬固定種野菜のほかに、市内10数農家が生産した地元野菜や、本山さんが買い付けた青梅市場の直送野菜も販売している。レジ袋の用意はないので、トートバッグをプレゼントしているほか、利用者にスタンプカードを配布し、200円以上買い上げで1スタンプ押し、50スタンプ貯まると500円分の野菜をプレゼントするサービスも実施。

 さらに、1区画30平方メートルの農地をレンタルする「おまかせ菜園」も運営している。作りたい野菜をリクエストすると、同園スタッフが種まきから、農作業まで代行。途中経過や状況をメールで報告。収穫は欲しい分だけ持ち帰り、残った分は同園が買い取るというシステム。種代から農作業込みで年間6万4800円だが、既に8件の申込があり、熱心な人は千葉から毎週末自ら農作業をしに来る。まだ、12区画程度余裕があるという。

 この日、夫婦で来店した中山在住の主婦(70)は、「チラシを見てきました。無農薬野菜店がここに来てくれ喜んでいます。今晩は、サラダと天ぷらにします」と笑顔。

 葉菜畑は、飯能駅北口から高萩駅行きイーグルバスで10分、バス停青木下車、徒歩1分。駐車場6台分。営業時間は、午前9時から正午。水曜日定休。