「狭山茶」を日本農業遺産に 飯能など11市町が推進協

 飯能市や日高市など、狭山茶生産農家がいる県西部を中心にした11市町は、入間市内で「狭山茶農業遺産推進協議会」の設立総会を開き、狭山茶の日本農業遺産登録と世界農業遺産の申請・承認に向け、関連事業を推進していくことを決めた。

 計画では平成30年度以降、農林水産省へ申請書を提出する。総会では、大久保勝飯能市長の監事就任が満場一致で承認された。会長は、構成11市町で最大の狭山茶栽培面積を誇る入間市の田中龍夫市長。

 日本農業遺産は、農林水産省が制定した制度。社会や環境に適応しながら何世代にもわたり、形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ(土地の上に農林水産業の営みを展開し、それが呈する一つの地域的まとまり)、生物多様性などが一体となった農林水産業システムのうち、世界及び日本における重要性、歴史的、現代的重要性を有するものを農林水産大臣が認定する。

 平成28年度に初となる候補地公募と第1回選定が実施。埼玉県内で川越市、所沢市、ふじみ野市、三芳町にまたがる「武蔵野地域」で継承されている「落ち葉堆肥農法」が、首都圏で唯一、同遺産として選定された。

 認定されることによる効果について、農林水産省は▽地域固有の農林水産業の継承▽地域住民の自信と誇りの創出▽農林水産物のブランド化▽観光客誘致▽企業との連携──を上げる。

 一方、世界農業遺産は同様の考え方に基づき、国連食糧農業機関が認定する制度。世界では16か国37地域、国内では8地域が認定されており、前記日本農業遺産は、この国内版。

 設立総会には、正会員の入間、所沢、狭山、飯能、日高、鶴ヶ島、川越、三芳、坂戸、ふじみ野、春日部の11市町と県川越農林振興センター、県茶業協会。各市町茶業協会と農協などの団体が出席。①協議会趣旨②名称③協議会規約④役員の選任⑤狭山茶日本農業遺産推進事業準備会の契約上の地位の移転⑥平成29年度事業計画⑦同予算の7議案について協議した。

 協議会の趣旨について「世界重要農業遺産システムへの登録を通じ、狭山茶産地の特徴である『自園・自製・自販』の伝統的システムの継続を推進し、もって多様な生態系の維持及び地域産業や観光等の振興を図るため」と定めたほか、役員人事では初代会長に田中入間市長、監事に大久保飯能市長を選出した。

 今年度の事業計画については、農業遺産申請に関することとして、▽認定申請書の作成▽申請書添付資料の作成に係る現況調査▽生物多様性調査報告書とりまとめ▽県及び学術機関への意見書依頼などを実施。同時に、農業遺産認定に向けた活動のPRも行う。

 協議会を構成する主な市の狭山茶栽培面積は、次のとおり。

 ①入間市=2万9489アール②所沢市=1万4335アール③狭山市=8109アール④飯能市=2522アール⑤日高市=2202アール⑥鶴ヶ島市=1864アール⑦川越市=834アール⑧三芳町=743アール。