自然も紹介、観光拠点化 郷土館の改装概要示す

改装のため休館中の郷土館

 自然展示コーナーの新設などを行う飯能市郷土館(同市飯能、尾崎泰弘館長)の改装工事の概要が、このほど同市から発表された。同館が、平成2年4月に開館してから初めての本格的な展示内容の変更となる。

 変更点は、自然展示新設のほか、市外からの見学客を呼び込むことを目指したビジターセンター機能を持たせること。同館は、現在改装工事に向け休館中で、工事等が終了する11月末まで休館予定だが、今後の進捗状況によっては、リニューアルオープンが遅れる可能性もある。

 同館の建設計画は、昭和46年、同館建設基金の設置からスタート。丸広百貨店からは1200万円の寄付が寄せられた。63年に工事が始まり平成2年4月に開館。地域の歴史、民俗、考古の3分野の展示に力を入れた歴史博物館。開館時の特別展示は、高山不動尊(同市高山、高貴山常楽院)に安置の「木造軍荼利明王立像」(国指定重要文化財)だった。

 26年には、入館者数が70万人を突破し、「名栗くらしの展示室」を新設。地域の歴史博物館としての役割を担うとともに、郷土の歴史を子どもたちに知ってもらう学習拠点として機能してきた。現在の入館者数は、年間約3万人弱で、1日当たり約100人。

 市は、名称が変更された「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」、来年秋から順次開園予定のムーミンのテーマパーク「メッツァ」、市街隣接地ながら自然豊かな「飯能河原・天覧山」の3つの観光拠点を結ぶ「都市回廊空間」の形成を目指している。

 同館改装の目的は、飯能河原・天覧山の拠点施設としての位置づけを明確にし、市内ばかりでなく、市外からも観光客を呼び込み、飯能河原・天覧山や、市街、周辺地区に人の流れを誘導する「自然のビジターセンター」機能を付加させること。

 そのために、現在、同館のシンボル「筏」が展示されているスペースに、自然展示コーナーを新設。飯能河原・天覧山地域の地質、植物、鳥類、哺乳類、両生類、昆虫を、実物も使って紹介し、同地域の魅力ある自然を知ってもらい、来館者の足を同地域や周辺地区に誘うことを目指す。

 また、より理解を深めてもらうための工夫として、体験や観察しながら学べるコーナーも作る。咲いている花や、多く見られる昆虫など、季節ごとの見どころなども紹介する。

 NPO法人天覧山・多峯主山の自然を守る会など市民団体と協力しながら展示物を検討し運営を考える。

 休憩コーナーだったスペースは、「飯能と西川材コーナー」に変わる。イラストなども使用して、実物大の筏流しを表現するほか、西川材を使用した様々な商品見本を展示する。

 現在の常設展示室が、新たな歴史展示室になる。市の特徴的な3地区「里、町、山」に合わせ、展示を3つのパートに区分。目玉は、軍荼利明王立像の複製と、県指定文化財「智観寺板石塔婆」(同市中山の智観寺蔵)の複製展示。実物ではないが、軍荼利明王立像が同館に展示されるのは、開館以来。この2つの文化遺産は、市の代表的な宝物で市内外にアピールするため常設する。

 「町」のコーナーには、明治末期頃の大通りの様子を150分の1のスケールで再現した模型を設置。「飯能今昔」コーナーは、地域の様子を撮影した写真などを展示し、定期的に展示物を替える。

 メッツァや子ども公園などから人を呼び込むような展示内容の詳細や仕組み作り、リニューアルオープン時の特別展示などは、今後検討される。

 尾崎館長は、「開館からの20年間で、特別展などを通じて判明した新たな成果を展示内容に盛り込みます。常に新しい情報を提供し飯能が好きになってもらえるような郷土館作りを目指したい」と抱負を語っている。