マルナカ製の2種類の川越唐桟。肌に優しい室内着(下)に仕上がり、くつろぎを演出

マルナカ製の2種類の川越唐桟。肌に優しい室内着(下)に仕上がり、くつろぎを演出

 JR東日本が、1日から運行を開始した豪華寝台列車「トランスイート四季島」に、室内でのくつろぎ着として、木綿織物の「川越唐桟」が採用された。この木綿織物を現代の技術で製造し納入したのは、飯能市川寺の老舗織物業者「マルナカ」(中里昌平社長)。

 JR東から、川越の呉服屋に川越唐桟でのくつろぎ着の製造が持ち掛けられたが、昔ながらの手織り製造では、JR東の大量発注をこなすことは困難だった。そこで高い技術力で知られ、埼玉西部地域で織物業者として唯一残っている同社に話が持ち込まれた。同社は技術力で見事に問題を克服、JR東に採用され、四季島の乗客たちに文字通りくつろぎを提供している。

 昭和46年頃から、日米繊維交渉の結果、海外から安い織物が大量に国内で流通するようになった。同社は生き残りをかけ、技術力が必要な付加価値の高い製品を、少量多品種製造する戦略で成功。

 平成24年に開業した東京スカイツリー(東京都墨田区)のスタッフの制服の服地も製造するなど、デザイナーの厳しい注文にも応え、複雑な模様の耐久性の高い生地作りも手掛けている。 

 唐桟は、南アジア辺りで作られ、江戸時代、オランダ船から日本にもたらされた縞柄の綿織物が起源。江戸時代の中頃から、日本国内でも製造されるようになり、外来の物が始まりだったことから、和物と区別され「唐」の文字が充てられたらしい。

 川越を中心に入間郡では盛んに作られていたが、時代とともに廃れ、手織り品が川越でも数軒の呉服屋で扱われているだけだった。

 四季島の和モダンとも言えるコンセプトに合致していたのか、川越唐桟に白羽の矢が立った。

 同社に相談が持ち掛けられたのは、昨年春。婦人服地など洋服の生地は作っていたが、着物の生地は製造しておらず当然川越唐桟の製造は初めての挑戦。

 昔の植物染料ならば、洗ったときに色落ちしても問題ないが、現代はたちまち苦情が殺到する。

 「化学染料の機械織りによる大量生産で、伝統織物の手織りの風合いを出す難しさばかりでなく、木綿でありながら絹のような光沢が要求され、堅牢さも必要だった」と、中里社長は、製造の難しさを振り返る。

しかし、夏ごろには、これまでに培ってきた技術力と経験で克服。

 「細い高級糸を使い、光沢があり、高級感もある現代にも通ずる和装感覚」(中里社長)の試作品を作り上げた。

 JR東の要求水準を満たし秋口に発注を受け、昨年末までに、くつろぎ着720着分の川越唐桟を納入した。

 四季島の室内の色調に調和した紺色が基調。柄は少し細めの縞模様と、やや太めの縞で白っぽい糸も使った物の2種類。

 「風呂上りなどに部屋で着るくつろぎ着。直接肌に触れる物だけに、天然素材のような感触と、親和性の高い着心地を感じてくれれば」と、中里社長は出来栄えに満足そうだった。