ヤマノススメで飯能再発見 「聖地巡礼」の起点にも

飯能の様々な場所がアニメの舞台になっている

 地元の人が飯能の魅力を再発見する機会などになればと、飯能市双柳在住の会社員・新達雄さんらアニメ「ヤマノススメ」のファングループは、アニメを通じた市民からのまちづくり活動を行っている。3月11日に市内で開催される「震災復興元気市」への参加も検討している。

 グループは、アニメの1シーンと実際の風景写真を対比させたパネル11点を昨年制作。現在は同市飯能の中央公民館に展示され、「聖地巡礼」に訪れるファンの目を楽しませている。

 ヤマノススメは、インドア派で市内の高校に通う女子高生が、登山に目覚めていく物語。アニメの主な舞台は飯能市で、天覧山、聖望学園、飯能河原、中央公民館、飯能駅前など、市内の各所が登場する。

 昨年12月、市がヤマノススメ関連グッズ7品目をふるさと納税の返礼品に追加したところ、全国のアニメファンなどから申し込みが殺到。1月半足らずで寄付額が総額2000万円を超えるほど、飯能市民以上に、全国的に知られたコンテンツになっている。

 アニメ放送が始まった当初は、新さんもそれほど興味はなかったという。しかし、友人の勧めで見るようになると、次第に魅力に引き込まれたと振り返る。

 飯能のいいところを再発見でき、「山と川で売り出している飯能にとって、ぴったりのアニメ。他の地域では、ご当地を取り上げたアニメを行政やまち全体で盛り上げているのだから、飯能でもできるのではないか。自分にできることはないか」と思い立ち、新さんは、SNSを活用し全国に呼び掛けた。

 次第に仲間が増え、昨年3月、市内で開かれた「震災復興元気市」へのイベント参加が実現した。

 グループの仲間の多くが、市内を丹念にくまなく見て、アニメに登場した実際の風景を一つ一つ探し出し写真に収めていたが、その数は膨大なものになっていたという。

 それを、約170か所に絞り、左右にアニメの1シーンと実際の風景写真を並べて展示した。

 この展示に撮りためた写真を持ち寄ったメンバーは30数人に上ったが、飯能市民は新さんだけで、新さんの撮った写真は1枚も展示されていない。 

 メンバーは、広島、長野、茨城など全国に点在し、市民以上に、ヤマノススメを通じて飯能に興味を持った人が多く、毎週のように遠くから飯能を訪ねてくる人もいるという。

 「市民にも、これだけ市内のいいところを紹介しているアニメがあることを知ってほしい。全24話を通してみると、ストーリーも非常に感動的」と、新さんは熱く語る。

 昨年の復興元気市は、アニメの上映会も行われ好評を得たこともあり、行政や市民にも協力的な人が少しずつ増えている。

 写真展示に使った白いパネルは、市の好意で写真を張ったままで、復興市終了後も同館ロビーで順次展示されている。

 また、ラストシーンに出てくる同市本町の飯能小町公園の道路沿いの花の植栽は、市や商店街の協力を得て、新さんらメンバーが管理している。

 「今年は、上映会の会場確保は難しいですが、何かできれば、と皆で検討しています」と、新さんはメンバーと構想を練っている。