市内で「山村留学」体験 飯能市の小規模特認校制度

川遊びに炭焼き、農業体験など、市街地でできない魅力が多い「山村留学」

 飯能市は、市街地で家族と暮らしながら山村留学ができる「小規模特認校制度」を設け、毎年希望者を募集しているが、平成29年度4月入学の希望者は一人だったことから、同市は、制度の意義を市民、家族に広く呼び掛けている。市では、4月入学にこだわらず、2・3学期からでも、あるいは途中からでも希望者を随時受け付けている。

 山村留学は、都市部に居住する小中学生が、長期間にわたって、親元から離れて、自然豊かな山村や離島にホームスティなどをしながら、地域の小規模校に通い、都会では体験できない自然の中で生活。家族から離れて暮らすことで自主性を養い、小規模校ならではの濃密な人間関係から連帯感や、人を思いやる心をはぐくませることが目的。

 山村留学を経験した有名女優は、その貴重な体験を折りに触れ語っている。

 また、受け入れる学校は、過疎化等に伴う人口減少の影響で、生徒児童が減り廃校の危機を迎えていたり、運動会をはじめ学校活動に支障をきたしていることも多い。都会から子どもたちを受け入れることで、学校を活性化させるメリットがある。

 同市でも、山間地の人口減少が目立ち、近年これら地域の児童数が減っていることから、平成22年度から、吾野小学校と名栗小学校を「小規模特認校」と認定し、市内に居住する子どもたちの学区外通学を特例として認めている。

 26年度からは、新たに東吾野小学校と西川小学校を認定し希望者を募っている。

 同市の制度の特徴とメリットは、子どもたちは家族と暮らしながら、通学する学校だけ山村留学が可能なこと。親は、子どもの成長を日々実感しながら、小規模校で自然体験をさせることができ、子どもは、親元から完全に離れる寂しさや不安を感じることなく、近所の幼馴染みとの関係を保ちながら、小規模校でみんなと仲良く遊び、学ぶことができる。

 認定された4校は、いずれも西武秩父線の最寄り駅から近い距離にあったり、公共のバス停から至近であったり、スクールバスがあったり、通学に便利な場所にあり、通学費は全額市から補助される。

 平成29年度は、飯能第一小、加治小、加治東小、原市場小、富士見小、双柳小、美杉台小の通学区に居住する子どもが対象。

 小規模校は、少人数制のため、先生の目が届きやすく、個別指導に近い環境で学力向上が望める。複式学級に不安を感じる親もいるが、自主性を養うカリキュラムがあり、生徒間同士が相互に学び合うことができるので、同市学校教育課では、ぜひ実際の授業をみてほしい、と話している。

 教諭全員が、児童全員の顔と名前を覚え、ランチルームで全校児童が一緒に給食を食べ、炭焼き体験や、地域の神社の例大祭への参加などを通じて、地域住民とも顔馴染みになるなど、小規模ならでの濃密な人との関わりを体験する。ホタルの飼育や、ボート体験、山や川での学習を通じ、自然と身近な学校生活が送れる。

 また、東吾野、西川、吾野の3小学校には、吾野中学校の英語の先生が行う英語の授業が週1回あり、外国語教育にも力を入れている。

 この特認校制度を利用した親の評判は高く、大規模校にいたときは、大人数の中で埋没し授業中まったく手を挙げられなかった子どもが、授業中積極的になり高学年のときにはリーダーシップをとるまでに成長した、と語る人も多いという。

 通学期間は、基本的に1年単位だが、一度入学すると卒業まで在籍するケースが多く、卒業後は、約半数の生徒が、そのまま山間地域の中学校に進学するという。