感動と出合える民生委員 勤続15年の平井さん表彰

思わぬことで少々はずかしい、という平井さん

 「仕事を続けていると感動することに出合えます」と語るのは、飯能市下直竹の平井哲夫さん(73)。同市南高麗地区で15年務めた民生委員・児童委員を今月末で退任する。同委員の地区会長を3期9年務め上げた長年の功績に対して、県の同委員協議会から永年勤続を称えられ、平成28年度の会長表彰を受けている。

 同委員は、高齢者や障害のある人、子育て中の人などが地域で安心して暮らせるように支援する人。厚生労働省が委嘱する任期3年の非常勤特別職の地方公務員と位置づけられているが、給与はなく、実際に掛かった経費が支給される。

 存在は知っていても、実際の活動は知らない人が多い。平井さんも、就任するまで、仕事の内容は分からなかったと話す。

 平井さんは、南高麗地区に生まれ育ち、飯能高校を出て、新電元工業株式会社に定年まで勤務。

 会社を辞めて数年後、同委員の前任者ら数人が、平井さん宅を訪れ、長時間にわたって同委員への就任を説得された。

 それまで、消防団、森林組合など地域の活動に長年携わり、自治会長まで務めた平井さんでも、「同委員は生活に困った人を助ける役くらいにしか思っておらず、私にはとてもできない」と感じ最初は固辞した。

 しかし、実際に就任してみると、楽しくて、平井さんは、15年も同委員として、地域のために貢献することに。

 民生委員は、行政と地域住民のパイプ役。地域の人から困りごとを相談されれば、できることは対処し、必要があれば、行政の担当部署につなげること。今は、高齢者の住む世帯、重い病人や障害者のいる世帯を、本人の承諾を取って、訪問や見守り活動などをすること。見守り対象者の近所に見守り協力者を見つけることも大事、と平井さんは日ごろの活動内容を話す。

 雨戸が開かなかったり、夜になっても洗濯物が取り込まれなかったり、電気が点かなかったら要注意。

 また、高齢者世帯が多い同地区は、振り込め詐欺や悪質商法対策も重要。平井さんは、「南民通信」というお知らせも作って回覧の形で毎月発行。悪質情報をわかりやすく紹介した国民生活センターのイラストなども転載し、好評を得ている。

 続けて来られたのは、同委員の先輩方も、地域住民もいい人ばかりで、人のすばらしさに感動することが多いから、という。

 困っている人に、朝夕の食事を届けていると、「何かあったらお手伝いするので言ってください」という声を多くの人から掛けられたり、高齢者宅を訪問した際は、お年寄りが、出火が怖いので温かい天ぷらを最近食べていない、と聞くと、一緒に居た人が、次の日に揚げたて天ぷらを高齢者宅に運んだり、人の温かさを感じる、と平井さんは楽しそうに話す。

 しかし、中には、重度の病で無職だった人が体調を崩し、勧めてもなかなか病院に行かずに孤独死したときは悔しかった、という平井さんは、今でも無念そう。

 平井さんは、「お金がなくても、行政に行けば受診できる何等かの方法があるので、とにかく相談してほしい」と、呼び掛けている。

 今、新興住宅街などを中心に、同委員は後継者不足になっているが、平井さんは、「難しいことを考えず、

 やる気があれば楽しいので、ぜひ成ってほしい。適性は、口が堅いことのほかは、地域のことが分かり明るく朗らかならば」と、同委員にもっと興味を持ってほしい、とアピールしている。