福島署長から感謝状を受け取る奥村さん

福島署長から感謝状を受け取る奥村さん

 飯能署(福島謙治署長)は4日、手渡し詐欺の電話に「騙されたふり」をして犯人逮捕に協力したとして、飯能市八幡町の奥村敬一さん(62)へ感謝状を贈呈した。

 同署は奥村さんの協力により、9月16日、八幡町地内の路上で現金を受け取りに来た東京都新宿区の無職・石居晃容疑者(20)を逮捕。福島署長は「勇気を持って冷静沈着に対応して頂き、犯人逮捕に結びついた」と感謝した。

 容疑者と電話口の男は別人と見られ、グループによる犯行の可能性が高い。奥村さんは「まさか自分の所に電話が来るとは。日頃からこうした詐欺は許せないと思っていた」と電話から逮捕までの一部始終を振り返った。

 午前10時半頃、自宅の電話のベルが鳴った。受話器を取った奥村さんに「俺だけど久しぶり。会いたいんだけど、何時に会える?」と電話口の男は親しげな口調で切り出したという。

 奥村さんはとっさに振り込め詐欺を疑ったが、元教員のため当時の教え子の可能性もあると思い、「急に会いたいと言われてもね」「ところで誰なんだい?」と落ち着いて対応。

 すると相手は「ヒロだよ」と名乗った。身内や教え子にもその名前に心当たりはなかったことから、詐欺を確信。人違いだと言って電話を切ろうとも思ったが、日頃、横行する振り込め詐欺の報道に怒りを覚えていた奥村さんは「騙されたふりをしてやろう」と判断。

「なんだヒロなの?お前が会いたいなんて珍しいな。一体どうしたんだ?」と話に乗った。

 相手は「また電話する」と一端電話を切り、しばらくして再びベルが鳴った。事情を聴くと、「浄水器の支払いで700万円必要になり、会社から一旦500万円を借りる形で使った。すぐに返さなければならない。何とかならないか」と打ち明けてきた。

 そこで奥村さんは「急に500万円と言われても無理だ。100~200万円なら何とか」と返答。相手は「もう一度かけ直す」とまた電話を切った。

 具体的に金の話が出たところで、奥村さんは飯能署へ通報し、騙されたふりを続け犯人を逮捕する作戦を決行することに。その後も電話で男とのやりとりは続き、自宅に駆けつけた署員の指示を受け「金が用意できた」と伝えた。

 電話口の男は「知人に取りに行かせるから、近くの店の前まで来てくれないか」と要求。奥村さんが約束の時間に店の前で待っていると、目の前に容疑者が現れた。

 容疑者の手にした携帯電話でヒロと名乗る男と話した後、「大事なお金なので、大切に扱って欲しい」と袋を容疑者に手渡し、署員の指示通り、受け取りのサインを書かせた。

受け渡しが終わり、奥村さんが振り返って歩き出した瞬間、張り込んでいた捜査員が一斉に飛び出し、容疑者を取り押さえたという。

 奥村さんによると、対面した容疑者は人当たりの良い印象。また、電話口の男は終始気さくな口調で「金融機関で金を下ろす際には、身内に貸すなどと言わず、リフォームなどに使うと言って欲しい」とのアドバイスまで受けたという。

 奥村さんは「実際に容疑者と接触した際には緊張したが、こんなにもうまくいくとは思わなかった。今回の一件で、まさかと思う出来事が自分にも降りかかることを実感した」と振り返った。

 感謝状を手渡した福島署長は「普通なら動揺してしまうところを冷静沈着に対応して頂き、見事に騙されたふりを演じ切った」と称え、「振り込め詐欺や手渡し詐欺は、皆さんがコツコツ貯めたお金を奪い取る許せない犯行。今回のケースを手本に、被害に遭うことの無いよう改めて注意を促したい」と話している。