飯能で木質バイオマス発電 市民環境会議会員が提案

ヴォルター社の「Volter40」(プラント見学ツアーパンフから)

 飯能の山林から運び出した木材を燃やして発電する「木質バイオマス発電」の市内稼働に向け、情熱を注ぐ人物がいる。「はんのう市民環境会議」(木川一男会長)の部会「地球環境部会」の代表を務める鴇田節男さん(68)(美杉台)。

 国内の木質バイオマス発電設備は多くが中規模以上であり、これだと飯能での燃料の安定供給は望めない。そこで、鴇田さんが着目したのが、フィンランドのヴォルター社が開発した超小型熱電併供給木質バイオマス発電機「Volter40」。

 間伐されたものの山林に放置されている西川材。木質バイオマス発電機で木材資源を活用し、エネルギーの地産地消をめざす取り組みだ。

 はんのう市民環境会議地球環境部会は、東日本大震災の体験を教訓に平成24年から活動を開始し、その一環で再生可能エネルギーの調査研究のため、「再生可能エネルギープロジェクトチーム」を立ち上げた。

 プロジェクトは小水力発電、太陽光発電、木質バイオマス発電を調査研究の対象としたが、着地点が見いだせずにいた。しかし、同28年3月東京ビッグサイトでの「第1回国際バイオマス発電展」の見学、北秋田市で稼働中の木質バイオマス発電設備の視察を転機に、「一つの結論に達した」(鴇田さん)。

 市域の76%(1万4605ヘクタール)が森林で占められる飯能では植林したスギ、ヒノキの間伐が行われている。が、この伐倒木が利用されないまま林内に放置され、さらには成長した木も採算が合わないことから、伐採されない状態だと鴇田さんは指摘する。

 国内で稼働中の木質バイオマス発電設備は、その多くが中規模以上で、現在の飯能では燃料となる木材の安定供給が困難。が、視察した北秋田市で稼働している小型発電機なら、飯能の山林に放置されている木材や間伐材の資源で発電することが可能という。

 この小型発電機は、フィランドのヴォルター社製「Volter40」。高さ2・5メートル、幅1・3メートル、奥行き4・8メートルほどで、駐車場1台分程度のスペースがあれば設置できる。

 木質チップを燃料に発電し、電気と熱を効率良く作り出す。同発電機1台の木質チップ消費量は1日あたり約1トンで、最大出力は40キロワット。

 鴇田さんは、同発電機について「効率78%と非常に高い効率性を実現しています。電気は売電でき、85度の温水と熱がただで使える。現在の飯能にすぐに活用できるのです」と話す。

 想定される設置場所は、公共施設、学校、病院、介護施設、温浴施設などと多岐にわたるが、現段階で最も現実的なところが、地元材でカヌーや各種木工製品を作り出す名栗カヌー工房だ。燃料のある山林に近接しているだけでなく、チップ加工が可能であり、施設の設置目的とも合致する。

 「森林資源としての価値がある飯能の山の宝を木質バイオマスエネルギーとして活用することで、持続可能な木質バイオマスエネルギーの地産地消となり、地域経済も活性できる」と鴇田さんの思いは、膨らむ一方だ。