美濃焼に四季折々の花 堀口郁夫さん個展

「一生かけて学びたい」と作品を手にする堀口さん

 日高市原宿の自宅に「原宿窯」を構え、作陶を続けている堀口郁夫さん(75)が、「花の織部展」と題し18日から24日まで、アートカフェ「ジョイナス」(日高市楡木169-1、電話985・8608)で個展を開催する。

 陶芸の世界に魅せられ窯を開いてから47年。美濃焼の技術を伝えるとともに身近な草花の絵付けを施し、実用美や生命の息吹を感じさせる作品を生み出している。

 堀口さんは武蔵野美術大学で絵画を学び、卒業後、中学校の美術教師に。授業で陶芸を教えたのをきっかけにその魅力に引かれ、趣味が高じて28歳の時に自宅に窯を開いた。

 さらには本格的に陶芸家としての道を歩もうと49歳で早期退職、美濃焼の産地となる岐阜県多治見市の多治見工業窯業専攻科で技術を学んだ。その後は都内や地元周辺で個展を開きながら作陶を続けている。

 「教員を早期退職する際は周囲の方々から引き止めて頂いたが、陶芸をやりたい、元気なうちに挑戦したいとの思いは変わらなかった。美濃焼の本場、多治見で学んだ経験は今も生きている」。 

 美濃焼は桃山時代に登場し、自由な発想で武将の古田織部が好み、美濃焼を基本に緑の釉薬が特徴的な「織部焼」を生み出した。

 堀口さんはこの織部焼の技法に絵画を学んだ経験を生かし、四季折々の身近な花を題材にした絵付け、自身で調合した釉薬を施し、自分らしさを表現している。

 住宅街の一角にある窯は地名にちなんで「原宿窯」。陶芸教室も長年行っており、遠方からも生徒が訪れる。基本を手ほどきした後は個々の感性を重んじた指導を心がける。

 「自分で作った器を生活の中で使いたい、という人も多い。作陶にこうでなくてはいけない、という決まりはない。個性を生かし、自分らしい作品を仕上げてもらえたら」。

 個展の開催は5年ぶり。皿、茶碗、湯飲み、花器など400点近くを出品し、販売も行う。売り上げの一部は熊本地震の義援金として被災地に送る。湯飲みやカップには「福」の文字を刻み、「“福”を飲んで1日を豊かに過ごして頂きたい」との願いを込めた。

 土をこねながら自分と向き合い、静かに構想を練る堀口さんは、「一生かけて勉強するつもりで、ゆとりを持って楽しみながら取り組みたい。色々な人の作品や絵画を見て、もっと鑑賞眼を養いたい」と笑顔を見せている。

 個展期間中の時間は午前11時から午後6時まで。18日は午後1時から。