名栗の「霧の華」 山間に生まれた紅茶

丁寧に手摘みを行う綵珠さん

 日本三大茶として定評のある狭山茶の産地の一つである飯能市。その茶葉を自家発酵させ紅茶にし、「名栗紅茶」として地域の特産品にしようと、上名栗にあるケーキ工房「綵珠」の代表・齋藤綵珠さん(69)、新太郎さん(70)夫妻が中心となって取り組んでいる。

 現在、同紅茶を味わえるのは同店のみ。名前を「霧の華」とし、品質を保証すると共に差別化を図り、ブランド価値を高めていくとしている。

 名栗地域では各家庭の畑で自分の家で飲む分の緑茶を作っていたが、近年では後継者不足もあり、段々とその習慣も廃れ、畑も荒れ始めていたという。そこで5年ほど前、齋藤さん夫妻はその茶葉を活用して地域の特産品を作ろうと、知人の畑を借り、手入れを開始。

 同時に静岡県へ講習を受けに行くなど知識の追求に励み、綵珠さんは平成25年に紅茶コーディネーター、翌年にインストラクターの資格を取得した。

 茶葉は完全無消毒で育て、収穫は仲間と共に全て手摘みで行い、手もみをして発酵させる。これまでに培った感覚を頼りに、色と香りが最も良いタイミングで発酵を止めることで、口当たりが柔らかくて飲みやすい「名栗紅茶」が完成する。

 収穫時期・畑によっても味が変わるといい、この時期はさわやかな風味が楽しめ、夏頃のものは深みやコクが、秋には甘味のある紅茶が味わえる。 

 紅茶の生産は35グラム瓶で、年間で200瓶ほど。今後は販売個所を増やすために新たに畑を借り、就労支援センター「にこにこハウス」のスタッフが協力に入りながら大量生産を目指すという。

 新太郎さんは「知識を含めてレベルを上げていき、良いものを安定的に作っていくことが課題。自分たちが先駆者となって名栗の特産品としてPRしていきたい」、綵珠さんは「名栗は朝夕の霧が深いので、お茶の味が良くなるんです。それに全く消毒もしてないので安全で、安全して飲むことが出来る。これからも正直に良いものを作っていく」と話す。

 6月1日には名栗紅茶を楽しむことの出来るエコツアーが開催される。手摘みや手もみなどを体験し、自分だけの紅茶を作るほか、昼は地元食材を使った食事を、食後は同店のケーキと共に作った紅茶を味わい、ティータイムを行う。定員は10人、費用は4500円(ガイド、昼食、土産、保険など含む)。申込み、問い合わせは979・0405へ。